壁の中の彼氏
 男が、明人が壁の中でうめき声を上げる。
 壁の中の男はやはり行方不明者の飯島明人だった。
 話を聞く限り、当時の記事と照らし合わせてみても辻褄があっている。
 だけどまだわからないことがある。
「どうしてあなたはここにいるの?」
亜美は壁に手を這わせて聞いた。
「あぁ……それも思い出したよ。全部、思い出したんだ」

☆☆☆

 車に押し込められた俺は必死で抵抗した。
 だけど相手は手慣れたもので、車に押し込められてすぐにナイフを首に突き立てられた。
 一瞬熱が体中に駆け巡って、それから痛みに変わった。
 もともと車の中で俺を殺すつもりでいたようで、車の床や座席にはビニールがひかれていた。
< 178 / 189 >

この作品をシェア

pagetop