壁の中の彼氏
 ガンッガンッガンッ!
 何度も続けているうちに小さな穴が開いた。
 そこから中を覗いてみるけれど、まだなにも見えない。
 今度は穴が相手弱くなった部分を、ハサミの柄で叩いた。
 バラバラと壁の破片が落ちていく。
 男はその間なにも言わなかった。
 もしかしたら、真っ暗な壁の中から微かな光を感じていたかもしれない。そうであってほしいと思う。
 何度も何度も壁に柄をぶつけていたら、両親が起き出してきた。
「亜美、なにしてるの!」
 壁を壊している娘に母親が駆け寄る。
「これはやらなきゃいけないことなの」
 母親が止めるのも無視して壁を破壊していく。
 握りこぶしくらいの大きさの穴が開いている。
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