壁の中の彼氏
 そこから中を覗き込んでみると、なにか白っぽいものが見えた気がした。
 骨。
 そんな言葉が亜美の脳裏をよぎる。
「壁を壊してどうするんだ?」
「中に人がいる」
 父親の質問に亜美は短く返事をした。
「十年前にこの街で行方不明になった飯島明人さんが、ここにいる」
 亜美の説明に両親は顔を見合わせた。
 もしかしたら、同じ文芸部だったアミが死んでしまったことで、おかしくなったと思われたかもしれない。
 それでも亜美は破壊行動を止めなかった。
 一刻でも早くここから明人を救い出したい。
 ただ、それだけだった。
 穴はどんどん大きくなり、人の頭ほどの大きさが開いた。
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