【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 今、書けるのはここまでだ。キスの種類で症状緩和の継続時間が変わるか変わらないか、そこに興味があった。
 両片思いをくっつけるための呪いだとすれば、恐らくここに変化があるのではないかというのがリネットの考えである。
 帳面をいつも持ち歩いている鞄の中にしまう。この鞄はキサレータ帝国にいたときも使っていた。すでに布地がすり切れているというのに手放せないのは、スサ小国から持ってきたものだからだ。
 だが、こんなぼろぼろの鞄を持ち歩いていたら、やはりラウルに迷惑をかけてしまうのだろうか。となれば、新しい鞄が欲しい。
 そこまで考えたリネットは、また軽く頭を振った。
 鞄を肩にかけ、研究室へと向かう。今日もまだ時間は早いが、手元に資料が足りない。
 葡萄色の帽子も忘れずにかぶった。
 外に出れば先ほどよりも太陽はだいぶ高い位置にあり、リネットは眩しさで思わず目を細くする。そして目立たないようにと、背中を丸めて歩き始めた。
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