【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 この本は呪い事典と違い、各地区の特徴と呪いや伝承の関係が記載されている。例えば、南にある村では、赤ん坊が生まれたときに女の子なら赤色の布玉を作り、男の子なら白の布玉を作る。これが子どもたちの身代わりとなり、災いは布玉が受け止める。そのため、子どもたちはすくすくと成長しましたと……いう話もある。
 その村では、子を授かった女性が、不幸な事故でお腹の赤ん坊ごと命を失ってしまった。肉体を失っても、その女性の魂は子を求める想いが強く、その地にとどまり続け、子どもの姿を見れば「我が子を返せ」と迫ってきたらしい。そのため、布玉に赤ん坊の産毛を一本埋め込むことで、災い避けになるのだとか。
 これも呪いと関係する。不幸な事故で亡くなった女性。その想いが強すぎて、空に還れずこの世にとどまる。特に肉体を失った魂は、目的のためだけに存在し、その気持ちが増長される。そして自我を失った魂は、目的を遂行するために手段を選ばず子どもを狙う。これも想いが強すぎた結果なのだ。
 ひとことで呪いと言っても、相手の不幸を望むだけではない。自分の願望を満たすものも含まれる。その気持ちが強すぎて、日常とかけ離れた結果をもたらすものが呪いと呼ばれていた。
 そしてその呪いを跳ね返すために作られた布玉。これは呪い返しとも呼ばれるが、それだって呪いの一つである。
 つまり、人の気持ちが具現化したもの。それが呪いなのだ。
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