【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 リネットは各地区の呪いを抜き出し、分類していくことにした。例えば、恨みによるものなのか、希望を求めるものなのか。
 ただ、分厚い資料であるため一日、二日で読み切れるものではない。ここはじっくりと腰を据えてこの本と向き合う必要があるだろう。
 リネットしかいない地下書庫に、ページをめくる音とペンを走らせる音が交互に響く。聞こえる音はそれだけ。そして本を傷めぬようにと薄暗い照明が室内を照らすが、リネットのいるテーブル席の周囲は明るい。
 そうやって静かな空間で呪いについて調べていたのに、突然の侵入者によって静寂は破られる。
 バンッ――。
 乱暴に扉が開かれ、リネットは驚いて席を立った。ここにやってくる者は、静かに扉を開ける者たちばかり。だから、事件か事故か、何か問題があったに違いないとリネットは身構えた。
「リネット! やはりここにいたのか」
 ラウルだった。しかも血相を変えて、大股で近づいてくる。
「団長さん、どうされました? いくら誰もいないからといっても、ここは図書館ですので、静かにお願いします」
 相手がラウルだと確認できたら、リネットはほっと息をついて、再び腰をおろした。
< 153 / 339 >

この作品をシェア

pagetop