【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
「そんな不安そうな顔をしないでください。ラウルさんはリネットさんに夢中だと思います。そうでなかったら、わざわざ私に昼食の約束を確認しに来ないですよ。リネットさんと約束していたかどうかなんて」
 くすりと笑ったシーナは、オレンジジュースを一口飲む。
 ラウルがリネットを気にするのは、リネットがラウルの運命を握っているからだ。リネットがラウルの前から姿を消せば、彼は苦しんだ末に息絶える。
 だからラウルがリネットの側にいて、大事に扱って、離れないようにしているだけ。
 わかっているはずなのに、考えれば考えるほど、胸の奥がずきずきと痛む。
 ラウルと一緒にいると、リネットはおかしくなる。あれほど切望していたずぼら生活。さっさとラウルと離れて好き勝手に過ごそうと思っているのに、それを想像するとどこか寂しいと感じてしまうのだ。
 ましてラウルが他の女性と一緒に食事をしたり何したりを想像すれば、喉の奥もツンとする。
 少しでも気を抜けば涙がこぼれそうだった。これは身体を痛めつけられての涙ではない。となれば、どんな涙なのか。なんで涙が出てくるのか。
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