【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 ラウルの視線は、グラスを握るリネットの手を追っている。
「何か、食べるか?」
「あ、えっと……今、何時くらいでしょうか? 団長さんが戻ってきたから、五時は過ぎてる?」
「あぁ。いや、まだ四時だ」
 思っていたより時間は経っていなかった。ここに来て眠ったのは一時間くらいだろうか。
「地下書庫に行ったら、君の姿が見えなくて。それで研究室へ行ったらエドガー殿が、君が体調を崩して帰ったというから……」
「申し訳ありません」
「いや……」
 リネットが両手で包み込んでいたグラスを、ラウルが奪う。その動きは少し強引だったが、彼の指先がリネットの手の甲に触れた瞬間、互いに一瞬だけ動きを止めた。
「今朝のこと……謝りたかった。大きな声を出して悪かった」
 グラスをテーブルの上に置き、ラウルが謝罪した。
「いえ……私も、大変失礼なことをしたと……そう、思っています……」
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