【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 ブリタは母親みたいだ。スサ小国に残してきた母とは似ても似つかないのに、彼女からは母性を感じる。
 リネットはスープを一口すすった。温かく、野菜の甘みが広がるスープに、思わず目を細めた。
「……美味しいです」
「そうかい。ゆっくり食べなさい」
「なんか、見てたら、僕もお腹空いた。師長、これ、もらっていい?」
 ブリタが返事する前に、籠の中に入ったパンを一つ、エドガーが手にした。半分に割って、口の中に放り込む。そんな彼の様子を見ていたら、パンも食べたくなってきた。
 誰かとこうやって食事を共にするのは、いつ以来だろう。
 キサレータ帝国では、いつも自分の部屋に運ばれてくる食事を一人で細々と食べていた。アルヴィスとは閨を共にしたことはあっても、食事を一緒にしたことは一度もない。
 思い出せば、胸の奥にじわりと怒りが湧いてくる。
「……それで、キサレータではどうやって過ごしていたんだい?」
 まるでリネットの心を読んだかのようなタイミングで、ブリタが声をかけてきた。
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