【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 少しの間、無言で歩く二人だが、目の前に紺色の建物が見えた。灰色の外観の建物が並ぶなか、ひときわ目立つ。
「あの店だ」
「可愛らしいお店ですね」
 少なくともリネットの中には、ああいったお店に足を運んだ記憶がない。
 カランコロンとベルを鳴らして扉を開けると、ふわっと甘い香りに包まれた。
「いらっしゃいませ」
 女性店員のやさしい声が出迎える。
 窓際の席を案内され、リネットはほっと息をついた。
「はぁ。疲れました。今日は、かなり歩いたと思うんですよね」
 毎日、朝の散歩は続けているが、今はそれ以上の距離を歩いている。
「だが、薬草園に行きたいと言ったのはリネットだろう?」
「そうですけど……」
「疲れて歩けないようなら、おぶってやる」
「え? それは子守歌なみに不要です」
 リネットが真顔で応えれば、ラウルはふっと鼻で笑う。
 そんな些細なやりとりですら、リネットにはどこか新鮮だった。
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