【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 リネットは書棚から慎重に資料を取り出した。これらは、現在の調査員たちが記録した内容もあるが、何百年も前に書かれた当時のものもある。
 まずは、ヤゴル遺跡の全体図を確認する。
 その資料を手にし、テーブル席へとついた。
 千年以上も前の集落の様子を示した資料もあるが、リネットの目的は数百年前のゴル族の様子だ。この時代には、約五十の住居があったらしい。一つの住居には四から六人が住んでいたことから、当時の人口はざっと想像できる。
 過去、出土した遺物は、木の実を割る道具やすりつぶす道具など。また、堆積した土の花粉分析を実施したところ、木の実が豊富な森林が広がっていたこともわかっている。
 つまり、ゴル族は木の実をすりつぶし、丸めて食べ物にしていたと考えられている。
 そんなゴル族が消滅した理由だが、それは詳しくわかっていない。ただ彼らは、自分たちの住居を焼いているのだ。それも呪術の一種かもしれないし、他の地区へ移動するために未練が残らぬようにと焼き払っただけかもしれない。
(住居が焼かれたというのは気になる……)
 民族が消滅する理由としては、本当の意味で全滅してしまうか、他民族との同化、もしくは分裂が原因としてあげられる。
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