【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 この場にいるのは騎士団からラウルとヒース、魔法師のリネット。それから発掘調査員たち。
 そこで調査責任者が深いため息をついたのは、今のところ、犯人に繋がる手がかりがまったくないからだ。
 なんのために遺跡を荒らし、遺物を盗んだのか。金儲けのためだとしても、これを売りに出せるのは闇オークションくらいだろう。だがあれは、奴隷や没落貴族の調度品などには高く値がつくが、発掘した遺物はがらくたのような価値にしかならない。
 遺物は歴史を知るためのものであり、それによって価値が跳ね上がる。
「……はい」
 リネットがそろりと手を上げた。彼女がこういった場で、積極的に意見を言うのは珍しい。
「騎士団を撤退させましょう」
「そうだな。俺たちの調査は終わった。これ以上は、こっちの調査員の管轄になるだろう」
「そうではありません」
 リネットが首を横に振った。
「完全撤退ではありません。近くに街がありますよね。そこに何人か控えさせます」
 ヤゴル遺跡の近くにテミオの街がある。発掘調査員たちは、この街に住んでいる者が多い。
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