【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 柱の陰からイアンが姿を見せる。
「終わった。そして、俺だけおいていくな。裏切り者め!」
「私があの場にいたらおかしいだろう?」
 また何も言い返せないラウルは、じとっとした視線を向けるだけ。
「それで、陛下の話はなんだったんだ? 君の結婚を認めてくれると?」
「そんなことを言うような相手ではないだろう?」
 来た道を戻るラウルの足取りは重い。
「帝国をなんとかしろと、そんな話だ」
「あぁ。例のヤゴル遺跡を荒らしたのも、帝国の人間だという話だったな」
 正確には、帝国の人間から依頼されたセーナス王国の人間である。貧しい彼らは、帝国が提示した多額の謝礼金に目がくらんで、遺物を盗んでいたのだ。
 セーナス王国民であれば、怪しまれずにヤゴル遺跡の臨時発掘調査員として採用されることができるから。
「あぁ……帝国で思い出した」
< 291 / 339 >

この作品をシェア

pagetop