【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 そう言いながらもラウルは、どこから取り出したのか、リネットの頭に帽子をぽふっとかぶせた。
「君のために用意しておいた。肌が白いから、日に当たって赤くなっては大変だ」
 鍔の広い夫人ものの帽子だ。葡萄色の帽子は、リネットの深緑の髪によく似合う。ただ、用意周到すぎる彼が少しだけ怖い。
 そう思いつつも、スサ小国を出てから、誰かからこのようなプレゼントをもらうのは、初めてだった。
「ありがとう……ございます……」
「実は昨日、街を見回りしたときに見つけたんだ。これから君には、ずっと世話になるわけだから……悪いことをしたなとは思っている。こんな帽子一つで許してほしいとは言わないが……どう気持ちを伝えたらいいかがわからない」
「いえ、お気になさらず。あの場で団長さんが私を選ぶのは、消去法でいっても正しい流れです。まぁ、プロという手もありますが……」
 リネットの言葉に、ラウルも苦笑する。
「だが、先ほど言った言葉は本心だ。君にはこうやって迷惑をかけている分、少しでも快適な生活を送ってほしい」
「というわりには、朝から私を振り回していますよね。この時間、私にとっては睡眠時間です」
< 62 / 339 >

この作品をシェア

pagetop