【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
第三章

1.

「えぇと。なんで団長さんはここにいるのでしょうか?」
 リネットは図書館の地下書庫で、ヤゴル地区に関する文献を探していた。古い紙の匂いは嫌いではない。どこか、香ばしいような、そんな匂いがする。
 書庫は薄暗いが、人がいる場所は魔法灯によって照らされている。魔法灯は魔力を源として明かりを灯す。リネットがこの国にやってきて作った魔法具だが、図書館や資料室などではオイルランプの代わりに使われていた。
「昼休憩の時間だからだ」
「それは一般的な話であって、私には必要のない概念です」
「そう言うと思ったから、迎えに来たんだ。昼ご飯、食べに行くぞ」
「いりません。子どもじゃあるまいし。お腹が空いたら勝手に食べますから」
 ドンとラウルが壁ドンならぬ本棚ドンをして、リネットを自身の身体の下に閉じ込めた。銀色の髪が魔法灯によって照らし出され、青い瞳は真剣にリネットを見つめている。
「だからだ。今朝も言ったが、君の生活は不規則すぎる。とにかく、食事の時間を決め、身体を規則正しい時間に慣れさせるんだ」
 なんて答えたらいいかわからず、リネットは、ふぅと息を吐く。
「お腹、空いていないんですよ」
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