【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
「まさか、忘れたとか言わないですよね?」
「いや、忘れてはいないが。彼女と一緒に帰っただけなのに、どうして連れ出したという話になるんだ?」
 ラウルにはさっぱりわからない。
「団長。あれは一緒に帰ったレベルではないですよ。リネットさんを横抱きにして、そのままお持ち帰りしたじゃないですか! さらに魔法師長には一緒に暮らすと言ったんですよね? それを聞いていた人たちがたくさんいたんです!」
 ヒースが言ったことは正しい。いつまでも帰ろうとしないリネットに業を煮やし、そのまま抱き上げて連れて帰った。ブリタには今朝のようにリネットが起きてこないと、大変だからと、同じ部屋で寝泊まりすることを提案したのだ。もちろん、ブリタは許可を出した。
「なるほど。周囲からはそう思われているということだな」
 ラウルの軽率な行動が招いた結果だ。それでも彼女とそういった関係にみられることは嫌ではなかった。
「だが、そう思ってもらったほうが、俺としては都合はいいのか……」
 呪いの件は公にはできない。そして今まで特定の異性との噂の一つもなかったラウルが、特定の女性を側に置いている。
 となればやはりリネットとの関係は恋人同士と説明するのが、無難なのではないだろうか。
 ただ、彼女がどう思うか、それだけが気がかりだった。
「だけど、リネットさんって……どこかで会ったことがあるような気がするのですが……」
 ヒースがそんな曖昧なことを口にしながら、首を傾げていた。
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