【完結】春の庭~替え玉少女はお飾りの妻になり利用される~
37 ハワード子爵子息、クリスの過去④
その圧倒的な演奏で、気が付かなかったが、アースキン伯爵令嬢のピアノコンサートは何かがおかしい。
そもそもピアノの置き方がおかしい。
普通は舞台に横向きに置かれるものだが、正面に、ピアニストと観客が向き合う形に置かれている。だから演奏中は手元も見えないし、譜面台で顔も見えないのだ。ピアノの下にはたくさんの花が飾られ、ペダルさばきはもちろん、足元も全く見えないようになっている。
舞台に上がる際のミュリエル嬢は笑顔で堂々と観客の拍手に応えているのに、演奏が終わって下がる際は拍手に応えることもなく猫背で素早く下がっていく。歩き方も違うような気がする。
何より舞台に上がってピアノの椅子に座る前に何故か、かがんでピアノの影に入りその姿がひと時、見えなくなる。
その時に毎回後ろのカーテンが、必ずゆれるのだ。
「これは……つけ入る隙があるかもな」
早速、人を使ってアースキン伯爵家の内情に探りを入れた。
今、ハリーは一人の平民女に入れあげてる。
悪友と市井にくり出し、訪れた場末のパブでピアノ演奏をしていた22歳のジェニーだ。
ピンクブロンドの髪に空色の瞳のファニーフェイス、それに反して身体は豊満な『おんな』の身体。
その日のうちに関係をもち、すっかりのぼせ上ったらしい。
「ジェニーと結婚したいと言ったら、父上に反対されたんだ!」
場末のパブのピアノ弾き、しかも演奏後は身体を売ってた娼婦だぞ? 当たり前だろう。
「父上はジェニーを屋敷から追い出せって言うんだ」
●カはこのピアノ弾きを使用人名目で屋敷に入れ、毎夜乳繰り合ってる。
「貴族令嬢と結婚しなければ、廃嫡するって言うんだよ!? 父上の子は僕しかいないのに!」
「いいじゃないですか。貴族のご令嬢と結婚すれば」
「いやだよ! ジェニーは僕の運命の相手なんだ! ジェニー以外と結婚したくないし、僕の愛を全てジェニーのものなんだ!」
女癖の悪い●カが純愛って、笑い死にさせるつもりか?
だが、そろそろ計画に乗せるのにいい頃合いだな。
「別に結婚しても愛さなくてもいいじゃないですか」
「そんなの……例え愛さなくてもパーティーに同伴したり、この屋敷の女主人として立ててやらなきゃいけないんだろ? そうしなきゃ自分の親や父上に告げ口するじゃないか! それにその女にジェニーがいじめられたらどうするんだよ!」
「告げ口ができない弱い立場の貴族令嬢を、妻にすればいいんですよ。公爵様も貴族令嬢を正妻の持てば、ジェニー嬢を愛人として、側に置くこともお許しになるのでは?……そして適当な時期に、子を成さない欠陥品だったと離縁してしまえばいいんです。そこにジェニー嬢との間に子がいれば、公爵様の結婚をお許しになるかもしれませんよ」
「そんな令嬢がいるのか?」
「私に心当たりがあります。そして彼女がいればブラクトンホールの夢も叶いますよ」
不思議そうな顔したあと、「お前に任せた」といつものセリフを吐き、大喜びでピアノ弾きと抱き合うハリーに、私は優しく微笑んでみせた。
そもそもピアノの置き方がおかしい。
普通は舞台に横向きに置かれるものだが、正面に、ピアニストと観客が向き合う形に置かれている。だから演奏中は手元も見えないし、譜面台で顔も見えないのだ。ピアノの下にはたくさんの花が飾られ、ペダルさばきはもちろん、足元も全く見えないようになっている。
舞台に上がる際のミュリエル嬢は笑顔で堂々と観客の拍手に応えているのに、演奏が終わって下がる際は拍手に応えることもなく猫背で素早く下がっていく。歩き方も違うような気がする。
何より舞台に上がってピアノの椅子に座る前に何故か、かがんでピアノの影に入りその姿がひと時、見えなくなる。
その時に毎回後ろのカーテンが、必ずゆれるのだ。
「これは……つけ入る隙があるかもな」
早速、人を使ってアースキン伯爵家の内情に探りを入れた。
今、ハリーは一人の平民女に入れあげてる。
悪友と市井にくり出し、訪れた場末のパブでピアノ演奏をしていた22歳のジェニーだ。
ピンクブロンドの髪に空色の瞳のファニーフェイス、それに反して身体は豊満な『おんな』の身体。
その日のうちに関係をもち、すっかりのぼせ上ったらしい。
「ジェニーと結婚したいと言ったら、父上に反対されたんだ!」
場末のパブのピアノ弾き、しかも演奏後は身体を売ってた娼婦だぞ? 当たり前だろう。
「父上はジェニーを屋敷から追い出せって言うんだ」
●カはこのピアノ弾きを使用人名目で屋敷に入れ、毎夜乳繰り合ってる。
「貴族令嬢と結婚しなければ、廃嫡するって言うんだよ!? 父上の子は僕しかいないのに!」
「いいじゃないですか。貴族のご令嬢と結婚すれば」
「いやだよ! ジェニーは僕の運命の相手なんだ! ジェニー以外と結婚したくないし、僕の愛を全てジェニーのものなんだ!」
女癖の悪い●カが純愛って、笑い死にさせるつもりか?
だが、そろそろ計画に乗せるのにいい頃合いだな。
「別に結婚しても愛さなくてもいいじゃないですか」
「そんなの……例え愛さなくてもパーティーに同伴したり、この屋敷の女主人として立ててやらなきゃいけないんだろ? そうしなきゃ自分の親や父上に告げ口するじゃないか! それにその女にジェニーがいじめられたらどうするんだよ!」
「告げ口ができない弱い立場の貴族令嬢を、妻にすればいいんですよ。公爵様も貴族令嬢を正妻の持てば、ジェニー嬢を愛人として、側に置くこともお許しになるのでは?……そして適当な時期に、子を成さない欠陥品だったと離縁してしまえばいいんです。そこにジェニー嬢との間に子がいれば、公爵様の結婚をお許しになるかもしれませんよ」
「そんな令嬢がいるのか?」
「私に心当たりがあります。そして彼女がいればブラクトンホールの夢も叶いますよ」
不思議そうな顔したあと、「お前に任せた」といつものセリフを吐き、大喜びでピアノ弾きと抱き合うハリーに、私は優しく微笑んでみせた。