【完結】春の庭~替え玉少女はお飾りの妻になり利用される~
38 お飾りの妻の私と、絶望の行方
全ては始めからクリス様の計画で、私は利用されるためだけにハリー様と結婚させられた。
その話しを盗み聞きしているところを、彼に見つかってしまい逃げてきてしまった。
闇雲に走り回ったが、私には逃げる場所なんてない。
結局自室に戻り、でもここにいたくなくて、窓を開け放ちベランダへと出る。
外は夜の暗闇、曇りなのか星々も見えない。冬の刺すような寒さが夜着の薄い布を揺らす。
「ここに春の庭は……ない」
想像の翼はどこへいったんだろう。
目を閉じても暗闇しか見えない、もう私には何も見えない。
この手ではもうピアノは弾けない。
ピアノが無ければ私はもう誰にも求められない。
ベランダの手すりを背を預け、室内を返り見る。
男性好みのインテリア、ここはハリー様のための部屋。
私の部屋は用意されていなかった。
私は始めから歓迎されていなかった。
「ここも私の居場所じゃない」
今まで虐げられ、利用され続けてきた人生。
ここでも何も変わらなかった。
利用されているのは分かってた。
分かってたはずなのに、どうしてこんなに辛いんだろう。
クリス様は言ってたのにな。
『貴女はこんなところで搾取されるべき人間ではない』って。
でも……
「クリス様も私を利用しただけ」
ポツリとつぶやく。
そう、利用されただけ。
そんな事を言って私を励ましたクリス様に。
バタバタと音をたてて、クリス様が部屋に飛び込んでくる。
「オリヴィア様!」
その顔は蒼白で、アッシュブルーの瞳は驚愕に見開けれている。
「いけません! 早まらないで下さい!」
もうハリー様の夢、ブラクトンホールでの演奏できたわよね?
夢もかなったし、こんな指になった私に、もう利用価値はないわよ?
「お願いです! 手すりから離れて……こちらにいらしてください」
どうして?
何だかとても疲れたの。
ここは4階のベランダ。
このまま後ろに身体を倒すだけで、全てが終われるのよ。
「お願いです! 私を置いて死なないで下さい!」
クリス様が左手の袖をまくると、あの大きな傷跡が見えた。
「私もかつては、音楽家を目指していました。でもハリー様に切りつけられて、その夢を奪われました。悔しくて、苦しくて……何度も自殺を考えました。
しかし我が家は所詮、貧乏な下位貴族。金のためにハリー様の側近となり、今まで這いつくばって生きてきました」
「でも私からバイオリンを奪ったハリー様に、仕えるのは悔しくて堪らなくて……でも領民のためには逃げることもできなくて……だから貴女を利用して、復讐のついでに側近からも外れようと、そんな利己的な理由で貴女に近づき、計画をたてて実行しました」
「次期公爵の仕事は全て私が引き受け、何も出来ないハリー様を無能者だと蔑んでいたけれど、本当は分かっていたんです。結局私は公爵家に利用されているだけのただの使用人だと。私はずーっとハリー様に利用されてきました…だから……だから私が貴女を利用したっていいだろう……そんな八つ当たり的な理由で貴女を利用し、自分を正当化してきたんです」
その話しを盗み聞きしているところを、彼に見つかってしまい逃げてきてしまった。
闇雲に走り回ったが、私には逃げる場所なんてない。
結局自室に戻り、でもここにいたくなくて、窓を開け放ちベランダへと出る。
外は夜の暗闇、曇りなのか星々も見えない。冬の刺すような寒さが夜着の薄い布を揺らす。
「ここに春の庭は……ない」
想像の翼はどこへいったんだろう。
目を閉じても暗闇しか見えない、もう私には何も見えない。
この手ではもうピアノは弾けない。
ピアノが無ければ私はもう誰にも求められない。
ベランダの手すりを背を預け、室内を返り見る。
男性好みのインテリア、ここはハリー様のための部屋。
私の部屋は用意されていなかった。
私は始めから歓迎されていなかった。
「ここも私の居場所じゃない」
今まで虐げられ、利用され続けてきた人生。
ここでも何も変わらなかった。
利用されているのは分かってた。
分かってたはずなのに、どうしてこんなに辛いんだろう。
クリス様は言ってたのにな。
『貴女はこんなところで搾取されるべき人間ではない』って。
でも……
「クリス様も私を利用しただけ」
ポツリとつぶやく。
そう、利用されただけ。
そんな事を言って私を励ましたクリス様に。
バタバタと音をたてて、クリス様が部屋に飛び込んでくる。
「オリヴィア様!」
その顔は蒼白で、アッシュブルーの瞳は驚愕に見開けれている。
「いけません! 早まらないで下さい!」
もうハリー様の夢、ブラクトンホールでの演奏できたわよね?
夢もかなったし、こんな指になった私に、もう利用価値はないわよ?
「お願いです! 手すりから離れて……こちらにいらしてください」
どうして?
何だかとても疲れたの。
ここは4階のベランダ。
このまま後ろに身体を倒すだけで、全てが終われるのよ。
「お願いです! 私を置いて死なないで下さい!」
クリス様が左手の袖をまくると、あの大きな傷跡が見えた。
「私もかつては、音楽家を目指していました。でもハリー様に切りつけられて、その夢を奪われました。悔しくて、苦しくて……何度も自殺を考えました。
しかし我が家は所詮、貧乏な下位貴族。金のためにハリー様の側近となり、今まで這いつくばって生きてきました」
「でも私からバイオリンを奪ったハリー様に、仕えるのは悔しくて堪らなくて……でも領民のためには逃げることもできなくて……だから貴女を利用して、復讐のついでに側近からも外れようと、そんな利己的な理由で貴女に近づき、計画をたてて実行しました」
「次期公爵の仕事は全て私が引き受け、何も出来ないハリー様を無能者だと蔑んでいたけれど、本当は分かっていたんです。結局私は公爵家に利用されているだけのただの使用人だと。私はずーっとハリー様に利用されてきました…だから……だから私が貴女を利用したっていいだろう……そんな八つ当たり的な理由で貴女を利用し、自分を正当化してきたんです」