【完結】春の庭~替え玉少女はお飾りの妻になり利用される~
39 お飾りの妻の私と、クリス様の告白
「そして、私はバイオリンを失ったのに、貴女には私より遥かに素晴らしい才能があって、音楽家として大成する可能性がある……私はその才能に嫉妬したのと同時に、貴女に憧れていました。貴女と音楽を作り出す日々は楽しくて、初めて生きていて良かったと思いました。」
「しかし次第に貴女の才能が開花し、世に知られるようになると、置いて行かれたくない、同じ場所にいて欲しい、そう思うようになりました。自分と同じ利用される屈辱の場所に、縛り付けたくなったのです。なんて醜い、醜い……」
顔を覆い隠すその両手は、ガクガクと大きく震えている。。
「でも、貴女の幸せを願った気持ちに、偽りはありません。私の事は罵ってもいい、殴ってもいい、一生憎んでいい、この命を奪う権利は貴女にあります! だから…だからどうか……死なないで…お願いです」
クリス様は這いつくばって絨毯に頭をこすりつける。
「私にはもう利用価値はないわ」
「もう二度と貴女を利用しません! この命にかけてもオリヴィア様、貴女を自由にしてみせます!」
「ピアノが弾けなくなったのが辛いの」
「その手は必ず治ります! 名医を探してみせますから、必ず良くなります……もしもだめだった場合は、私の右手を差し上げます」
「……」
「私の右手をくっつけられたらいいんですが……ですが……ですが! 私もピアノを弾けるようになります! 私が右手のパートを弾きます。そして左手のパートをオリヴィア様が弾いて下さい。二人で連弾をしましょう」
「連弾…」
「そうです。連弾で……二人でオリヴィア様の音を探しましょう。この右手は一生貴女のものです。必ず私は貴女の音楽を取り戻してみせます!」
「……そんな罪滅ぼしはいらないわ。もうクリス様の顔も見たくないの」
「顔を潰しましょう。声もいやですか? のども潰します」
「どうしてそんな…」
「オリヴィア様に生きていて欲しいからです! 小さいころから虐待を受けて、私に利用されてそのまま死ぬなんて……そんなこと許されるはずがありません! 神が許しても、私は許せない! 絶対に! ……必ず貴女を幸せにしてみせます!」
クリス様の瞳から一筋の雨だれが落ちる。
「私は貴女を愛しているんです」
突拍子もないそのセリフに怯んだら、クリス様がすばやく動き私に抱き着いてきた。
そのまま、手すりから引き離され、二人でベランダに転がってしまう。
「死なないで下さい! お願いだ!……どうかお願い……愛しているんです」
嗚咽で彼の声は、どんどんか細くなっていく。
『お願い』なんて私の人生で初めて言われた。
みんな私に願うのではなく、奪っていくばかりだった。
クリス様のアッシュブルーの瞳から、次から次へとポロポロと涙がこぼれてくる。
室内に戻っても、彼は私の身体を抱きしめたまま、一晩中離さなかった。
「しかし次第に貴女の才能が開花し、世に知られるようになると、置いて行かれたくない、同じ場所にいて欲しい、そう思うようになりました。自分と同じ利用される屈辱の場所に、縛り付けたくなったのです。なんて醜い、醜い……」
顔を覆い隠すその両手は、ガクガクと大きく震えている。。
「でも、貴女の幸せを願った気持ちに、偽りはありません。私の事は罵ってもいい、殴ってもいい、一生憎んでいい、この命を奪う権利は貴女にあります! だから…だからどうか……死なないで…お願いです」
クリス様は這いつくばって絨毯に頭をこすりつける。
「私にはもう利用価値はないわ」
「もう二度と貴女を利用しません! この命にかけてもオリヴィア様、貴女を自由にしてみせます!」
「ピアノが弾けなくなったのが辛いの」
「その手は必ず治ります! 名医を探してみせますから、必ず良くなります……もしもだめだった場合は、私の右手を差し上げます」
「……」
「私の右手をくっつけられたらいいんですが……ですが……ですが! 私もピアノを弾けるようになります! 私が右手のパートを弾きます。そして左手のパートをオリヴィア様が弾いて下さい。二人で連弾をしましょう」
「連弾…」
「そうです。連弾で……二人でオリヴィア様の音を探しましょう。この右手は一生貴女のものです。必ず私は貴女の音楽を取り戻してみせます!」
「……そんな罪滅ぼしはいらないわ。もうクリス様の顔も見たくないの」
「顔を潰しましょう。声もいやですか? のども潰します」
「どうしてそんな…」
「オリヴィア様に生きていて欲しいからです! 小さいころから虐待を受けて、私に利用されてそのまま死ぬなんて……そんなこと許されるはずがありません! 神が許しても、私は許せない! 絶対に! ……必ず貴女を幸せにしてみせます!」
クリス様の瞳から一筋の雨だれが落ちる。
「私は貴女を愛しているんです」
突拍子もないそのセリフに怯んだら、クリス様がすばやく動き私に抱き着いてきた。
そのまま、手すりから引き離され、二人でベランダに転がってしまう。
「死なないで下さい! お願いだ!……どうかお願い……愛しているんです」
嗚咽で彼の声は、どんどんか細くなっていく。
『お願い』なんて私の人生で初めて言われた。
みんな私に願うのではなく、奪っていくばかりだった。
クリス様のアッシュブルーの瞳から、次から次へとポロポロと涙がこぼれてくる。
室内に戻っても、彼は私の身体を抱きしめたまま、一晩中離さなかった。