【完結】春の庭~替え玉少女はお飾りの妻になり利用される~

【番外編】 新婚の私と、クリス様との初夜事情⑤

 怖い、怖いけど、それ以上にクリス様を他人に取られたくない!

 この身体で私に繋ぎ止められるのならと……その思いの方が大きい。
 だから震えはこの前より小さい。

「ふふふっ。覚悟の武者震いですか。かわいいですね」

「震えがひどくなっても絶対にやめないで下さい。乗り越えたいんです」

「……分かりました」

 ゆっくりと私の夜着を脱がし始める。
 ガクガクと身体が震えるが、抵抗しないように身を固くする。

 クリス様自身も夜着を脱ぐ。
 騎士でもないのに、その身体は引き締まり彫刻のように美しい。見とれているのが分かったのか、私の手を取り彼の胸に導く。

「固い……」

「結構、剣術は得意なんですよ。毎日鍛錬もしてるんです」

「どきどきしてる」

「そりゃ、好きな女性と今から愛し合うんですから興奮もしますよ。さぁ、存分に私を触って下さい。終わったら私の番です。思う存分貴女に触りますから覚悟して下さい」

 その笑顔は優し気なのに、何だか怖い。




 彼の右手が私の胸を優しく包み、唇が乳首をはむ。
 左手は私の足の間の敏感な部分をこする。

 アースキン家の使用人の男たちも、同じように私に触れてきたけれど、クリス様に触れられると、まるで神経をむき出しにされたような……何倍もの快感を身体が拾い上げる。

「ん……」

 ダメだ。声を出しちゃ。

「どうしたんですか? 我慢しないで声を聞かせて下さい」


 マティルダ様の声が聞こえる。『いやらしい! 声なんてあげて! 娼婦の子はやっぱり娼婦ね!』


「気持ちいいんでしょう?」


『子どものくせに気持ち良くなるなんて、なんておぞましいの!』
 その言葉を思い出したとたんに血の気が引いた。

「お、おかしい……気持ちよくなるなんておかしい……」
 使用人の男たちに触られても気持ち悪いだけで、ちっとも気持ちよくなんて無かったのにでも……でも…………今日はどうして!


 クリス様は愛撫していた手を離し、私の両頬を包み、顔中にキスの雨を降らせる。

「気持ちよくなるのは当たり前のことなんです。だって私はオリヴィアを気持ちよくするために触っているし、オリヴィアは私が好きでしょう?」

 多分好きだと、こくんとうなずいた。

「好きな人に触られるのは嬉しいし、気持ちいいものなんです。私もオリヴィアに触ってもらって気持ちよくなりたい」
 そう耳元でささやかれて、自分の顔が赤くなるのが分かった。

 何? この色気大魔神は……!

「この行為は子どもを作るだけのものじゃないんです。私も貴女もお互い気持ち良くなって……身体だけじゃない、心をつなげる行為なんです」

「心をつなげる……」

「だから、オリヴィアも気持ちよくなって下さい。声をあげて気持ちいいって私に教えて下さい。オリヴィアが気持ちいいと私は嬉しい」

「嬉しい……?」

「はい、嬉しいです」
< 61 / 76 >

この作品をシェア

pagetop