【完結】春の庭~替え玉少女はお飾りの妻になり利用される~
【愛読御礼番外編】公爵令息アーサーの憂鬱③
次は物理学と化学……
「え? え? どういう事? 分かんないよ。僕が分かる言葉で説明してよ!」
「はぁ? 公用語で説明しているが理解できないのか? お前は外国人か?」
「違うよ! その用語が分からないから…もっと普通の言葉で説明してよ!」
「この用語を説明しろと? それ位の基礎知識、自分で調べて覚えろ!」
イライラが最高潮に達した時、ローレンスが泣き出した。
「君は色々知ってる天才だけど、僕は知らないんだもん」
「……」
ポロポロと涙を流す彼を前に、むかし姉であるシャーロットに言われた言葉を思い出した。
「何言ってるか全然分からないわ! わたくしにも分かるように嚙み砕いて説明しなさいよ! 大多数の者は、あなたのような知識はないの! わたくしがすぐに理解できる言葉で説明ができない貴方は、いくら頭が良くたって語彙力が欠落している未熟者よ。人の知識には偏りがあるものなの……貴方の知っている事は相手は知らない、逆に貴方の知らない事を相手は知っていることもあるの。その隔たりを埋めながら双方が理解するのに『言葉』があるの。その『言葉』出し惜しみして、他人とコミュニケーションを取れない貴方は、これからどうやって生きていくのよ!」
当時は何言ってるんだ、僕の言葉を理解できないのは相手が●カなだけで、なぜこっちが知性のランクを下げて、言葉選びして理解させる努力しないといけないのかと憤慨にしたが――――今なら分かる。
そう、この中等学院で僕はそれで苦労している。
僕は普通に喋っているのに、みんなは意味の分かない言葉を発するカマキリだと敬遠し、遠巻きにしている。
ローレンスやアン以外話しかけてくれる生徒はいない。
「……もう一度説明するよ」
涙目のローレンスが顔を上げる。
僕は出来るだけ丁寧に彼の質問に答え、分かりやすい言葉を必死に探し続けた。
そうしてむかえた夏休み前の試験結果を、ローレンスは飛び跳ねて報告してきた。
「見て見て! アーサー! 数学48点、物理は56点、化学は何と72点だよ!」
「あ、あぁ……」
もちろん僕は1位だ。
「国語が97点…」
小説も読んでいない、何の努力もしていない。
ローレンスの勉強を見ていただけ……。
だがどうして成績が上がったのかは分かった。
中等学院は僕にとって下位の教育機関。
その学院で出されるテストはもちろんそのレベル……
「●カでも理解できる、低レベルの語彙力に僕は順応できたんだ!」
今回のテストでアンも4位に上がっていた。
きっと頑張っていたのだろう。
図書館で真剣に勉強する姿を思い出す。
すると、クスクスと小さな笑い声が後ろから聞こえ始めた。
「デブス王女が勉強に必死で笑える」
「それくらいしか取り柄がないでしょ」
「でもあれだけ頑張っても4位どまり?」
なに?
凡人のアンがどんなに頑張っても天才の僕を抜ける訳がないじゃないか!
気になって周りを見渡すと、離れた場所にアンの姿が見えた。
肉に埋もれた小さな唇が動き、口パクで言葉をつなぐ。
『お・め・で・と・う』
その事に何故か、無性に腹が立つ。
最近彼女を見るだけで不愉快でたまらない。
僕は彼女一瞥もくれず、教室戻った。
夏休みを前にしたある日、ローレンスが声をかけてきた。
「僕の成績に父さまが大喜びでさ~~~是非アーサーを領地に招待して、もてなしたいって言っているんだけど、どうかな?」
ベンティング侯爵領は、牧畜がさかんなド田舎だ。興味はない。
「僕は忙しい。気持ちだけ頂く」
「え~~~うちは避暑地として有名だから、夏でも涼しいよ? それに最近、天文台も出来たんだ」
「なに!?」
僕のマイブームは天文学……
「元々星降る高原として有名だったけど、国家プロジェクトとして天文台を作ることになって……アーリア帝国から最新の大型望遠鏡を輸入して……」
「行く! 必ず行く! いつ行けばいい!」
「……僕と一緒に帰る?」
「え? え? どういう事? 分かんないよ。僕が分かる言葉で説明してよ!」
「はぁ? 公用語で説明しているが理解できないのか? お前は外国人か?」
「違うよ! その用語が分からないから…もっと普通の言葉で説明してよ!」
「この用語を説明しろと? それ位の基礎知識、自分で調べて覚えろ!」
イライラが最高潮に達した時、ローレンスが泣き出した。
「君は色々知ってる天才だけど、僕は知らないんだもん」
「……」
ポロポロと涙を流す彼を前に、むかし姉であるシャーロットに言われた言葉を思い出した。
「何言ってるか全然分からないわ! わたくしにも分かるように嚙み砕いて説明しなさいよ! 大多数の者は、あなたのような知識はないの! わたくしがすぐに理解できる言葉で説明ができない貴方は、いくら頭が良くたって語彙力が欠落している未熟者よ。人の知識には偏りがあるものなの……貴方の知っている事は相手は知らない、逆に貴方の知らない事を相手は知っていることもあるの。その隔たりを埋めながら双方が理解するのに『言葉』があるの。その『言葉』出し惜しみして、他人とコミュニケーションを取れない貴方は、これからどうやって生きていくのよ!」
当時は何言ってるんだ、僕の言葉を理解できないのは相手が●カなだけで、なぜこっちが知性のランクを下げて、言葉選びして理解させる努力しないといけないのかと憤慨にしたが――――今なら分かる。
そう、この中等学院で僕はそれで苦労している。
僕は普通に喋っているのに、みんなは意味の分かない言葉を発するカマキリだと敬遠し、遠巻きにしている。
ローレンスやアン以外話しかけてくれる生徒はいない。
「……もう一度説明するよ」
涙目のローレンスが顔を上げる。
僕は出来るだけ丁寧に彼の質問に答え、分かりやすい言葉を必死に探し続けた。
そうしてむかえた夏休み前の試験結果を、ローレンスは飛び跳ねて報告してきた。
「見て見て! アーサー! 数学48点、物理は56点、化学は何と72点だよ!」
「あ、あぁ……」
もちろん僕は1位だ。
「国語が97点…」
小説も読んでいない、何の努力もしていない。
ローレンスの勉強を見ていただけ……。
だがどうして成績が上がったのかは分かった。
中等学院は僕にとって下位の教育機関。
その学院で出されるテストはもちろんそのレベル……
「●カでも理解できる、低レベルの語彙力に僕は順応できたんだ!」
今回のテストでアンも4位に上がっていた。
きっと頑張っていたのだろう。
図書館で真剣に勉強する姿を思い出す。
すると、クスクスと小さな笑い声が後ろから聞こえ始めた。
「デブス王女が勉強に必死で笑える」
「それくらいしか取り柄がないでしょ」
「でもあれだけ頑張っても4位どまり?」
なに?
凡人のアンがどんなに頑張っても天才の僕を抜ける訳がないじゃないか!
気になって周りを見渡すと、離れた場所にアンの姿が見えた。
肉に埋もれた小さな唇が動き、口パクで言葉をつなぐ。
『お・め・で・と・う』
その事に何故か、無性に腹が立つ。
最近彼女を見るだけで不愉快でたまらない。
僕は彼女一瞥もくれず、教室戻った。
夏休みを前にしたある日、ローレンスが声をかけてきた。
「僕の成績に父さまが大喜びでさ~~~是非アーサーを領地に招待して、もてなしたいって言っているんだけど、どうかな?」
ベンティング侯爵領は、牧畜がさかんなド田舎だ。興味はない。
「僕は忙しい。気持ちだけ頂く」
「え~~~うちは避暑地として有名だから、夏でも涼しいよ? それに最近、天文台も出来たんだ」
「なに!?」
僕のマイブームは天文学……
「元々星降る高原として有名だったけど、国家プロジェクトとして天文台を作ることになって……アーリア帝国から最新の大型望遠鏡を輸入して……」
「行く! 必ず行く! いつ行けばいい!」
「……僕と一緒に帰る?」