【完結】春の庭~替え玉少女はお飾りの妻になり利用される~
【愛読御礼番外編】公爵令息アーサーの憂鬱④
公爵邸に戻り、すぐにその旨を両親に伝え、使用人に荷物をまとめさせた。
「夏休みに友達んちに行くなんて、そんな普通な事をアーサーがするなんてねぇ~」
姉上は含み笑い。
「アーサーに友達ができるなんて……」
母上は涙目。
「ほら、学校も良いものだろう? 行ってよかっただろう?」
父上はドヤ顔だ。
何をみんな勘違いしてるんだか……僕は星を見に行くだけなのに。
沢山の土産と共に夏休みに入ってすぐ、ローレンスとベンティング侯爵領へと向かった。
途中で宿を取り、4日かけて着いたベンティング侯爵領は、山岳地帯らしく高原の上に屋敷があり、確かに王都よりかなり涼しく快適だった。
侯爵夫妻には大歓迎され、特産の牛肉の巨大ステーキをもてなされ非常に美味だったが、それより僕の心は天文台へと飛んでいる。
ローレンスをせかして次の日には、天文台に近い別荘へと移動した。
「あぁあああ凄い! なんて美しいんだ!」
これほどの美を僕は見たことがない!
顕微鏡で見た葉脈や雪の結晶も美しいと思ったが、肉眼では点にしか見えない星々の真の姿はこれほどまでに美しかったのか……!
天体望遠鏡にかじりついて感嘆の声を上げる僕に
「君ってこんなに饒舌だったんだね……」とローレンスは驚いていたが、たっぷり2時間かじりついていた僕にとうとう根をあげ、「明日も来たらいいから」と帰宅を促された。
展望台から歩いて15分ほどの別荘に戻ると、ローレンスにベランダに連れて行かれる。
「ここに寝転がってみなよ」
上着を渡されたのでそれを着こみ、それぞれデッキチェアに寝転がる。
「わぁ……」
「すごいでしょ?」
正に満天の星空だ。
ローレンスの指示で全ての電灯が消された別荘内はもちろん、周辺には何も光源は無く真っ暗闇で……
「宇宙を漂っているみたいだ」
広大な宇宙に一人取り残されたような……
宇宙の一部になったような……
ふわふわと身体まで浮き上がりそうな、その感覚に酔いしれる。
で、酔いしれすぎてそのまま眠ってしまい、その夜10才にもなって使用人に抱かれてベッドに運ばれるという屈辱を味わった事は、内緒の話だ。
1週間ほど別荘で天体観測を楽しみ、高原の侯爵邸に戻った。
そして目的も果たした僕は、そろそろ王都に戻ることにした。
馬車に乗り込む僕を、侯爵夫妻が見送りに来てくれた。
「大変お世話になりました。ありがとうございました」
「楽しんで頂けたかな?」
「もちろんです」
この素晴らしい体験を教授たちに自慢してやろう。
「また、学校でな」
ローレンスも声をかけてくる。
彼は夏休みいっぱい領地で過ごすので、帰るのは僕一人だ。
ローレンスの隣には、着飾った同い年くらいの少女がいた。
「紹介するよ。僕の婚約者のハンベルク伯爵令嬢のシルフィーヌだ」
「初めまして。キャンベル公爵令息様」
「初めまして」
「へへっ。可愛いだろう?」
そうローレンスが自慢する令嬢の、恥ずかし気に頬を染める姿は確かに可愛らしい。
「シルフィーヌったら少しやせたのではなくて?」
侯爵夫人が心配げに少女の肩に手を置く。
「そうだよね? 大丈夫なの?」
ローレンスもその顔をのぞき込む。
「ち…違うんです! ……その……ダイエットをしたんです」
「まぁ!貴女の年でそんな事をしてはいけないわ! 今は身体を作る時期なのよ」
「そうだよ! 無理しないで!」
「……でも、ローレンス様に少しでも可愛いって思ってもらいたくて…」
ほおおっとローレンスや侯爵夫妻以外の使用人からも感嘆のため息が出た。
くだらない……
「では、私はここで」
そう告げてさっさと馬車に乗り込む。
目の端にはシルフィーヌ嬢の手を握り、微笑むローレンスが見える。
なんだろう……このモヤモヤした気分は。
不快に感じるのは、どうしてだろう。
「夏休みに友達んちに行くなんて、そんな普通な事をアーサーがするなんてねぇ~」
姉上は含み笑い。
「アーサーに友達ができるなんて……」
母上は涙目。
「ほら、学校も良いものだろう? 行ってよかっただろう?」
父上はドヤ顔だ。
何をみんな勘違いしてるんだか……僕は星を見に行くだけなのに。
沢山の土産と共に夏休みに入ってすぐ、ローレンスとベンティング侯爵領へと向かった。
途中で宿を取り、4日かけて着いたベンティング侯爵領は、山岳地帯らしく高原の上に屋敷があり、確かに王都よりかなり涼しく快適だった。
侯爵夫妻には大歓迎され、特産の牛肉の巨大ステーキをもてなされ非常に美味だったが、それより僕の心は天文台へと飛んでいる。
ローレンスをせかして次の日には、天文台に近い別荘へと移動した。
「あぁあああ凄い! なんて美しいんだ!」
これほどの美を僕は見たことがない!
顕微鏡で見た葉脈や雪の結晶も美しいと思ったが、肉眼では点にしか見えない星々の真の姿はこれほどまでに美しかったのか……!
天体望遠鏡にかじりついて感嘆の声を上げる僕に
「君ってこんなに饒舌だったんだね……」とローレンスは驚いていたが、たっぷり2時間かじりついていた僕にとうとう根をあげ、「明日も来たらいいから」と帰宅を促された。
展望台から歩いて15分ほどの別荘に戻ると、ローレンスにベランダに連れて行かれる。
「ここに寝転がってみなよ」
上着を渡されたのでそれを着こみ、それぞれデッキチェアに寝転がる。
「わぁ……」
「すごいでしょ?」
正に満天の星空だ。
ローレンスの指示で全ての電灯が消された別荘内はもちろん、周辺には何も光源は無く真っ暗闇で……
「宇宙を漂っているみたいだ」
広大な宇宙に一人取り残されたような……
宇宙の一部になったような……
ふわふわと身体まで浮き上がりそうな、その感覚に酔いしれる。
で、酔いしれすぎてそのまま眠ってしまい、その夜10才にもなって使用人に抱かれてベッドに運ばれるという屈辱を味わった事は、内緒の話だ。
1週間ほど別荘で天体観測を楽しみ、高原の侯爵邸に戻った。
そして目的も果たした僕は、そろそろ王都に戻ることにした。
馬車に乗り込む僕を、侯爵夫妻が見送りに来てくれた。
「大変お世話になりました。ありがとうございました」
「楽しんで頂けたかな?」
「もちろんです」
この素晴らしい体験を教授たちに自慢してやろう。
「また、学校でな」
ローレンスも声をかけてくる。
彼は夏休みいっぱい領地で過ごすので、帰るのは僕一人だ。
ローレンスの隣には、着飾った同い年くらいの少女がいた。
「紹介するよ。僕の婚約者のハンベルク伯爵令嬢のシルフィーヌだ」
「初めまして。キャンベル公爵令息様」
「初めまして」
「へへっ。可愛いだろう?」
そうローレンスが自慢する令嬢の、恥ずかし気に頬を染める姿は確かに可愛らしい。
「シルフィーヌったら少しやせたのではなくて?」
侯爵夫人が心配げに少女の肩に手を置く。
「そうだよね? 大丈夫なの?」
ローレンスもその顔をのぞき込む。
「ち…違うんです! ……その……ダイエットをしたんです」
「まぁ!貴女の年でそんな事をしてはいけないわ! 今は身体を作る時期なのよ」
「そうだよ! 無理しないで!」
「……でも、ローレンス様に少しでも可愛いって思ってもらいたくて…」
ほおおっとローレンスや侯爵夫妻以外の使用人からも感嘆のため息が出た。
くだらない……
「では、私はここで」
そう告げてさっさと馬車に乗り込む。
目の端にはシルフィーヌ嬢の手を握り、微笑むローレンスが見える。
なんだろう……このモヤモヤした気分は。
不快に感じるのは、どうしてだろう。