義弟の甘い罠は壊れるほど狂おしく【長編版】
 俺が目を覚ましても、姉さんはまだ、眠ったままだった。
 バイタルモニターのピッピッという電子音と規則正しい波線が、姉さんが無事だということを知らせている。
 点滴の雫が、時間を刻むみたいにゆっくりと落ちていた。
 ベッドのそばの椅子に腰を下ろし、そっと姉さんの手を取る。
 指先は細くて、冷たい。
 一命は取り留めた。それだけは間違いない。
 だけど俺が刺したことに、変わりはない。
 いつもより白くなった姉さんの頬に、恐る恐る手のひらを当てる。
 体温はある。ちゃんと、生きている。
 
「……ねえ、姉さん」

 呼びかけても、起きる気配はない。

「あの時……できなかったから……」
 
 言葉が、喉の奥で引っかかる。

「……いいよね?」

 自分でも何を求めているのかわからないまま、顔を近づけた。
 あと少し、息が触れる距離まで。
 だけど──

(なに、やってんだ……)

 俺には触れる資格なんてない。
 守っていたつもりで、傷つけて。こんなことを望んでいいはずがない。
 俺は、ゆっくりと手を離した。
 その後、俺は一足先に退院した。
 姉さんが目を覚ましたのは、それから三日後のことだった。
 

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