義弟の甘い罠は壊れるほど狂おしく【長編版】
*
──そして当日。
待ち合わせの遊園地前に着いた瞬間、サングラスをしていてもわかるくらいのレベルで律の表情がみるみるうちに曇った。
「……なにこれ?」
目の前に並ぶ保科さんと真子さんの姿を見た途端、律の眉間にくっきりと皺が寄る。
(えっ……そんなにイヤそうにする!?)
私は思わず引きつった笑いを浮かべながら、慌てて弁解する。
「だ、だから、言ったじゃない……今日は、ダブルデートだって……」
「ふぅん?」
律は短く鼻を鳴らした。
不機嫌さが隠しきれていない、というか、ダダ漏れである。
私の脳裏に「大丈夫かな、今日……」という不安がよぎった、そのとき──。
「あ、あ、あの! リッくん! は、は、は、はじめて……まともにお話しするかもで、菜月さんと……同僚の……」
真子さんが勇気を振り絞って律に声をかけた。
普段のカッチリとしたスーツ姿に見慣れているからか、おしゃれした姿が新鮮に見えた。
緊張で体もガチガチに固まり、噛み倒している。
「ああ……たしか、真子さん、だったよね?」
律がふっと笑顔を浮かべた。
──え、さっきまでの不機嫌どこいったの!?
そのあまりの切り替えの速さに、私は内心ツッコミを入れる。
「きゃああああああ! な、な、名前! 名前ぇぇぇ!!」
真子さんがその場で崩れ落ちそうになり、私の腕をがっしりと掴む。
顔を真っ赤にして、瞳は潤んでいる。
推しに名前を呼ばれるというファン冥利に尽きる瞬間が来たらしい。
「お、落ち着いて、真子さん!」
「や、やばいよ菜月ちゃん。わたし、心臓持たない……!」
「なに言ってるんですか、頑張ってください!」
私は小声で真子さんを励ます。
──そう、ここで真子さんに頑張ってもらわないと、この作戦は意味がない。
律を〝姉離れ〟させるための大事な第一歩なんだから!
(お願いします真子さん、今日はあなたがヒロインなんだから……!)
心の中で両手を合わせ、私は必死にエールを送った。
──そして当日。
待ち合わせの遊園地前に着いた瞬間、サングラスをしていてもわかるくらいのレベルで律の表情がみるみるうちに曇った。
「……なにこれ?」
目の前に並ぶ保科さんと真子さんの姿を見た途端、律の眉間にくっきりと皺が寄る。
(えっ……そんなにイヤそうにする!?)
私は思わず引きつった笑いを浮かべながら、慌てて弁解する。
「だ、だから、言ったじゃない……今日は、ダブルデートだって……」
「ふぅん?」
律は短く鼻を鳴らした。
不機嫌さが隠しきれていない、というか、ダダ漏れである。
私の脳裏に「大丈夫かな、今日……」という不安がよぎった、そのとき──。
「あ、あ、あの! リッくん! は、は、は、はじめて……まともにお話しするかもで、菜月さんと……同僚の……」
真子さんが勇気を振り絞って律に声をかけた。
普段のカッチリとしたスーツ姿に見慣れているからか、おしゃれした姿が新鮮に見えた。
緊張で体もガチガチに固まり、噛み倒している。
「ああ……たしか、真子さん、だったよね?」
律がふっと笑顔を浮かべた。
──え、さっきまでの不機嫌どこいったの!?
そのあまりの切り替えの速さに、私は内心ツッコミを入れる。
「きゃああああああ! な、な、名前! 名前ぇぇぇ!!」
真子さんがその場で崩れ落ちそうになり、私の腕をがっしりと掴む。
顔を真っ赤にして、瞳は潤んでいる。
推しに名前を呼ばれるというファン冥利に尽きる瞬間が来たらしい。
「お、落ち着いて、真子さん!」
「や、やばいよ菜月ちゃん。わたし、心臓持たない……!」
「なに言ってるんですか、頑張ってください!」
私は小声で真子さんを励ます。
──そう、ここで真子さんに頑張ってもらわないと、この作戦は意味がない。
律を〝姉離れ〟させるための大事な第一歩なんだから!
(お願いします真子さん、今日はあなたがヒロインなんだから……!)
心の中で両手を合わせ、私は必死にエールを送った。