義弟の甘い罠は壊れるほど狂おしく【長編版】
 その後のデートは、ある意味で驚くほどスムーズに進んだ。
 真子さんと律は、予想以上に馬が合ったらしく、あっという間に二人の世界を作っていた。
 ジェットコースターに並んで肩を寄せ合い、メリーゴーラウンドでも隣り合って一緒に馬に乗り、まるで昔からの友達みたいに楽しそうだ。
 一方、その間の私と保科さんはというと──完全に置いてけぼりである。
 でも、うまくいきそうで良かった。

 最後に観覧車に乗ると、必然的に私と保科さん二人きりになってしまった。
 気まずい気持ちのまま、ゴンドラがゆっくりと上がっていく。
 夕暮れが綺麗で、かつて彰人さんと来た日のことを、思い出していた。
 あの時は、彰人さんが隣にいて……手をつないで、それから……。

 彰人さんが隣にいるようで振り返ると、いつの間にか保科さんが私の隣に座っていて、反射的にのけぞった。

「ねえ、菜月さん。観覧車、二人っきりってロマンチックですよね」
「そ、そうですね……」

(なぜ、隣に……!?)
 
 いや、律と真子さん、二人の様子を見るならこちら側の席の方がいいのはわかっているけれど。一ミリでも距離を保とうと、端に寄る。幸いにも、保科さんが距離を詰めてくることはなかった。

 誤魔化すように、再び夕暮れの景色を眺めていると、保科さんの手がほんの少しだけ近づく。
 
「菜月さん、遊園地を出た後、食事でも──」
「あーっ! 真子さんたち、手つないでません!? ほら見て見て、今! 今!!」
「……え? あ、うん……」

 実際はつないでなかった。ただ、保科さんと一緒にいるのが気まずくて、大げさに言ってしまっただけだ。
 
「菜月さん、あの、この後──」
「あっ、もうライトアップの時間なんですね! 電気つきましたよ! 綺麗ですね!」
「は、はい、そうですね……」
 
 保科さんのさりげないアプローチを、なんとかかわし切った。
 
 観覧車から戻ってきた真子さんは、頬を赤らめながら幸せそうに笑っていた。
 律はというと──真子さんの前ではいつも通りの爽やかな笑顔を浮かべているくせに、私がふと目を向けると、ときどき不機嫌そうに視線をそらしていた。

 こうして一日が終わり──私たちは遊園地の前で解散した。
 
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