義弟の甘い罠は壊れるほど狂おしく【長編版】

10・失くしたストラップ

 ついてない日は、とことんついてない。
 彰人さんが亡くなって、一生分の不運が降ってきたと思っていたのに。
 昨夜はあんな酷い目に遭って、今も不運に見舞われるとは。神様はずいぶんと意地悪なようだ。
 
「あれっ……? あれ……っ!?」

 ──ない。
 ストラップが、ない。

 出勤前に忘れ物がないか、鞄の中身をチェックしていたら……。
 紐がちぎれて一部が引っかかっているだけだった。
 ダイニングテーブルの上に鞄の中を全部ひっくり返すが、ない。

「……うそ……」

 紐の先が無惨にほつれているのを見て、絶望する。

「姉さん、どうしたの?」
「ストラップがないの……!」
「ああ、俺があげたやつ?」

 律は、思ったよりも落ち着いていた。
 それが余計に、私を焦らせる。
 どうしよう。たぶん昨夜、転んだ時にちぎれたんだ。
 もっと大切に扱えばよかった。
 だって、あれには──。

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