義弟の甘い罠は壊れるほど狂おしく【長編版】
「ストラップなら、俺がまた作ってあげるよ」

 律の軽い調子の言葉に、思わず焦って口をついた。

「ダメよ! 彰人さんの指輪がついてるのに!」
 
 言った瞬間、はっとした。
 律の表情が、一瞬だけ固まる。
 
「…………」
 
 黙り込んでしまい、その沈黙が長く感じられた。
 胸がざわつく。
 
(……あ)

 言いすぎた。
 我に返って、慌てて言葉を継ぐ。
 
「ご、ごめん……。でも、心当たりはあるから……探してくる」
「どこ?」
「宝堂ビルの近く。そこで転んだから……」

 律は昨夜のことを思い出したのか一瞬だけ眉をしかめた。
 
「俺も行く」
「でも、仕事は?」
 
 律はスマホを取り出し、ちらりと時間を確認する。

「大丈夫、まだ時間あるから」

 そう言って、何でもないことのように上着を手に取った。
 律がせっかく作ってくれたものなのに。
 彰人さんの指輪のことばかり気にしていた。
 気持ちを無下にしてしまったようで、罪悪感が募る。
 
(ごめんね、律……)
 
 私は律の背中を見ながらもう一度、心の中で謝った。 
 
 
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