義弟の甘い罠は壊れるほど狂おしく【長編版】

11・律の部屋

 昨夜は律のことで不安になりながら布団に潜ったけれど、気づいたら朝だった。
 カーテンの隙間から陽の光が差し込む、いつもの朝。
 習慣とは恐ろしいもので、目覚ましが鳴る前に目を開けた。
 昨夜のことが夢だったらいいのに……そう思っていると、背中側にもぞりと何かが動く気配を感じた。

(え……?)

 不思議に思って振り向くと──律が、私の布団の中ですやすやと寝息を立てている。

「きゃああああああ!」

 悲鳴を上げると、律はのそのそと上体を起こした。
 寝ぼけ眼のまま、目を細めて小さく笑う。
 
「姉さん、おはよぉ……」

 まるで何事もなかったかのような、いつもの調子の声。

「もうっ、律! 私の部屋に入るの禁止!!」

 慌てて枕を投げると、律は顔でそれを受け止めて苦笑いする。
 昨夜のあれはなんだったんだろう?
 律はいつもと変わらない、穏やかで整った顔だった。


「またですか、ほんと仲がよろしいですね」

 内村さんが、朝食を並べながら朗らかに笑う。

「笑いごとじゃないですよ……」

 大きくため息をつきながら、席に着いた。
 いつもと同じ、パン、ウインナー、サラダにコーヒーの朝食だ。
 
「ごめんって。だから、覚えてないんだって」

 律が口を尖らせながら、サラダをつついている。
 寝ぼけて私の部屋に入ってきた──そう言い張るけれど、本当に?
 自分の部屋には入るなって言ったくせに。
 
『俺の部屋には入らないでね』
 
 実家に戻ってきた時に、そう言った律の言葉を思い出す。
 ──律の部屋に、何かある。
 そう思った私は、律が仕事に出かけたのを確認してから彼の部屋に向かった。

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