義弟の甘い罠は壊れるほど狂おしく【長編版】
 入らないでというわりには、意外にも鍵はかかっておらず、すんなりと侵入できた。
 電気をつけると、異様な気配を感じた。
 いや、部屋はいたって普通だ。布団の乱れたベッドに、閉めっぱなしのカーテン。私に「入らないで」と言ったくらいだ。多分、内村さんが掃除に入ったりもしていないのだろう。少し、埃っぽい。
 中でも一番目についたのは、デスクの上にある三台の液晶モニター。配信をやるからって、三台も必要なのだろうか? こればかりは私が詳しくないだけなのかもしれない。そのそばに、マイクとヘッドホンがある。
 スタイリッシュな棚が横にあって、本や雑誌がぎっしりと並べられている。
 壁には大きなコルクボード。思い出の写真でも飾られているのかと思ったが──。

「……え?」

 写真を見て、顔をしかめた。だってそれは、家族写真でもなんでもない。
 数人の男の写真が貼られ、顔に×印が書かれていた。どれも見覚えのある顔ばかりだ。
 
「これ……中学の同級生の……。こっちは、高校の時の……!」
 
 震える手で、写真をなぞる。
 
「この人は、大学の時……この人も……っ」
 
 恐ろしくなってきた。

「……っ」

 最後に見た写真は、なぜかダーツの矢が刺さっていた。

「これ……保科さん……!?」

 思考を巡らせる。
 考えたくはないけれど、この写真にはすべて共通点がある……。
 私に、告白してきた人や好意を向けてきた人だ。

「なん、で……?」

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