義弟の甘い罠は壊れるほど狂おしく【長編版】

14・映っていたものは……

 管理室は、思っていたよりも照明の白い光がまぶしかった。
 壁際に古いモニターがたくさん並んでいて、各階の防犯カメラの映像が時々切り替わって映る。そのうちの一つに、御影法律事務所のあるフロアの廊下が映っていた。画面の奥には、非常階段へ続く金属扉が小さく見える。普段なら誰も気に留めないはずの、ありふれた扉だ。
 養父に書いてもらった許可証を見せると、管理人の男性は、渋々といった感じで当時の映像を探してくれた。
 
「ギリギリだったね。警察も問題ないって判断してたから、そろそろデータを消すところだったんだよ」

 防犯カメラの映像データは、このビルでは三ヶ月から半年ほどで処分してしまうらしい。もしほんの数日遅かったら、何もわからないままだったかもしれない。
 管理人さんは手慣れた様子でマウスとキーボードを操作する。

「えっと……たしか九月だったね」
 
 彰人さんが亡くなった日を思い出し、喉が詰まる感じだった。
 病院で彰人さんの顔にかけられた白い布を、私はどうしても取ることができなかった。

『転落による外傷性ショック』
 
 死体検案書に印字された文字を見た瞬間、呼吸が止まった。受け止めることができなくて、葬儀の時もまともに顔を見ることができなかったことを、今になってひどく後悔している。

 だから今日、ここで見なければならない。
 あの日、何が起きたのかを。
 
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