義弟の甘い罠は壊れるほど狂おしく【長編版】
御影法律事務所は、今日も変わらず慌ただしい空気に満ちていた。弁護士の先生方は皆、裁判や面談で席を外しているのだろう。キーボードと電話のベルの音が、事務所の忙しなさをさらに際立たせていた。
事情を総務の事務員に伝えると、彼女は資料を確認してから、申し訳なさそうに首を振った。
「仕事用スマホなら、警察の方に渡されました。どうすればいいか御影先生に確認したところ……『もう使わないから、解約して構わない』と言われたので、解約しましたが……」
「そんな……」
あのスマホが解決の糸口になったかもしれないのに。
(もう、手詰まりなの……?)
肩を落とした時、養父との話を終えたらしい軽井沢さんが戻ってきた。
「菜月ちゃん、律くん。何か進展はあったかい?」
「先生!」
私と律は、管理室で気づいたことを早口で話した。軽井沢さんは黙って聞き、腕を組んだまま小さくうなずく。
「菜月ちゃん、諦めるのはまだ早いよ」
まだ全然大丈夫、といった風に、軽井沢さんは明るい表情を見せた。
「解約前の通信記録は、まだ通信会社に残っていると思う。警察に照会する手続きは必要だけど……できるよ」
その言葉に、光が見えた気がした。
軽井沢さんは、素早くスマホを取り出して操作する。
「……もしもし、出口? ああ、俺だ。ちょっと急ぎで頼みたいことがある。──いや、事件性がないと判断された件なんだけど、ちょっと状況が変わった。再確認したいんだ。任意照会でいい。俺が責任を持つ」
横でそのやりとりを聞きながら、はやる鼓動を抑える。
「うん……ああ、遺族から委任は取ってある。書面はあとで署へ持っていくから。とりあえず照会書、今日中に回せないか?」
しばらくの沈黙。難航しているようだ。
「いや、そこをなんとか。……それはわかってるけど。──ああ。じゃあ、後で。……助かるよ」
通話が切れた。
「……先生、もしかして」
「知り合いが刑事課にいてね。仕事は早い男なんだ」
事情を総務の事務員に伝えると、彼女は資料を確認してから、申し訳なさそうに首を振った。
「仕事用スマホなら、警察の方に渡されました。どうすればいいか御影先生に確認したところ……『もう使わないから、解約して構わない』と言われたので、解約しましたが……」
「そんな……」
あのスマホが解決の糸口になったかもしれないのに。
(もう、手詰まりなの……?)
肩を落とした時、養父との話を終えたらしい軽井沢さんが戻ってきた。
「菜月ちゃん、律くん。何か進展はあったかい?」
「先生!」
私と律は、管理室で気づいたことを早口で話した。軽井沢さんは黙って聞き、腕を組んだまま小さくうなずく。
「菜月ちゃん、諦めるのはまだ早いよ」
まだ全然大丈夫、といった風に、軽井沢さんは明るい表情を見せた。
「解約前の通信記録は、まだ通信会社に残っていると思う。警察に照会する手続きは必要だけど……できるよ」
その言葉に、光が見えた気がした。
軽井沢さんは、素早くスマホを取り出して操作する。
「……もしもし、出口? ああ、俺だ。ちょっと急ぎで頼みたいことがある。──いや、事件性がないと判断された件なんだけど、ちょっと状況が変わった。再確認したいんだ。任意照会でいい。俺が責任を持つ」
横でそのやりとりを聞きながら、はやる鼓動を抑える。
「うん……ああ、遺族から委任は取ってある。書面はあとで署へ持っていくから。とりあえず照会書、今日中に回せないか?」
しばらくの沈黙。難航しているようだ。
「いや、そこをなんとか。……それはわかってるけど。──ああ。じゃあ、後で。……助かるよ」
通話が切れた。
「……先生、もしかして」
「知り合いが刑事課にいてね。仕事は早い男なんだ」