義弟の甘い罠は壊れるほど狂おしく【長編版】

16・交換条件

 二人で私の部屋に入り、扉を閉める。
 パタン、と小さな音がして、それだけで世界から切り離された気がした。
 しん……と、外の気配が遠のいていく。
 監視の目は消えたはずなのに、少しだけ緊張する。
 
「……どれ?」
「このアプリ」

 ベッドに並んで腰を下ろす。
 距離が近いけれど、今はそんなことを言っていられない。
 
「よ……よし。再生、するわね……」
 
 私は深く息を吸い、震える人差し指を画面へと伸ばした。
 
「姉さん」
「ん?」
「姉さんも、俺のお願い聞いてくれる?」
 
 律が、潤んだような目でこちらを見てくる。
 顔が近い。嫌な汗が背中を伝う。
 今は、そんな話をしている場合じゃないのに。
 
「なに? 後でなら──」
「キスしていい?」

 一瞬、呼吸が止まった。

「こ……こんな時に、冗談やめてよ!」

 逃げようと身を引いた私より早く、律の手が肩に触れた。
 軽く押されただけなのに、ベッドに背中が沈む。
 
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