義弟の甘い罠は壊れるほど狂おしく【長編版】
田口茉莉乃だった。彼女はすでにロープを解かれ、手錠をかけられている。
そんな状態で、御影先生に詰め寄っていった。
「言うことを聞けばヨリ戻してくれるって……! 律を認知してくれるって言ったじゃない!」
「な、何を言っている……!?」
御影先生は、彼女を突き飛ばした。
倒れそうになったところを出口さんが受け止め、それでもなお飛びかかろうとする彼女を制している。
「あんたが! 指示通りにやればって言ったんでしょうが! しらばっくれてもだめよ。あの時の会話は、ちゃんと録音してあるんだからね……!」
「このアマ……!!」
ギリっと奥歯を噛み締める音が聞こえた。
手を振り上げようとしたところを、出口さんが振り払った。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ! ヨリを……戻す……!?」
立ち上がった養父が目を見開く。
「それに……指示通りにやれば、って……」
「まさか……」
律の、本当の父親で……彰人さんを死に追いやった黒幕が……。
周囲がざわめいた。みんなは御影先生を見ていたけれど、私は律に視線を向ける。
律は声も上げず、ただ一瞬だけ視線を伏せた。
御影先生に視線を戻すと、いつもの紳士な表情が崩れていた。
「御影先生……! どうして……!!」
「どうして? 決まっているだろう。俺はずっと宝堂グループを狙っていた」
いつもと違う、荒れた言葉。
押し殺した怒りが、奥底から泡立つように漏れ始める。
「……ずっとだ。ずっと俺が整えてやってきたんだ。何十年も、誰にも気づかれないように。全部、全部俺が……」
言葉が途中で途切れた。
皆の視線が、御影先生に集まる。
張りつめた空気を叩き割るように、声が爆ぜた。
「律!!」
名指しされた律が、はっと顔を上げる。
「おまえが! さっさとこの娘と結婚していれば!! こんな遠回りする必要は! なかったんだよ!!」
部屋がびりびりと響いた。
目は血走り頬は引きつり、理性の色はどこにもなかった。
「……御影さん」
出口さんは手錠を取り出し、御影先生に近づく。
叫ぶだけ叫んで観念したのか、抵抗はしなかった。
──その時、そばで低くしぼり出すような声がした。
「……やっぱり排除しておくべきだった」
そんな状態で、御影先生に詰め寄っていった。
「言うことを聞けばヨリ戻してくれるって……! 律を認知してくれるって言ったじゃない!」
「な、何を言っている……!?」
御影先生は、彼女を突き飛ばした。
倒れそうになったところを出口さんが受け止め、それでもなお飛びかかろうとする彼女を制している。
「あんたが! 指示通りにやればって言ったんでしょうが! しらばっくれてもだめよ。あの時の会話は、ちゃんと録音してあるんだからね……!」
「このアマ……!!」
ギリっと奥歯を噛み締める音が聞こえた。
手を振り上げようとしたところを、出口さんが振り払った。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ! ヨリを……戻す……!?」
立ち上がった養父が目を見開く。
「それに……指示通りにやれば、って……」
「まさか……」
律の、本当の父親で……彰人さんを死に追いやった黒幕が……。
周囲がざわめいた。みんなは御影先生を見ていたけれど、私は律に視線を向ける。
律は声も上げず、ただ一瞬だけ視線を伏せた。
御影先生に視線を戻すと、いつもの紳士な表情が崩れていた。
「御影先生……! どうして……!!」
「どうして? 決まっているだろう。俺はずっと宝堂グループを狙っていた」
いつもと違う、荒れた言葉。
押し殺した怒りが、奥底から泡立つように漏れ始める。
「……ずっとだ。ずっと俺が整えてやってきたんだ。何十年も、誰にも気づかれないように。全部、全部俺が……」
言葉が途中で途切れた。
皆の視線が、御影先生に集まる。
張りつめた空気を叩き割るように、声が爆ぜた。
「律!!」
名指しされた律が、はっと顔を上げる。
「おまえが! さっさとこの娘と結婚していれば!! こんな遠回りする必要は! なかったんだよ!!」
部屋がびりびりと響いた。
目は血走り頬は引きつり、理性の色はどこにもなかった。
「……御影さん」
出口さんは手錠を取り出し、御影先生に近づく。
叫ぶだけ叫んで観念したのか、抵抗はしなかった。
──その時、そばで低くしぼり出すような声がした。
「……やっぱり排除しておくべきだった」