幼なじみの、隠しごと。
「ねぇ! 止まってよっ!」

「何?」


叶はそう低い声で言って、立ち止まる。

いつもの様子と違った叶に黙りそうになるけど、きちんと文句を言わないと気が済まない。


「なんで挨拶させてくれなかったの? 今日は一緒に撮影しないでも、またいつか一緒に撮影するかもしれないのに……」

「なんでって……わからないの?」

「わからないよっ!」


私は叶に向かって大きな声で言う。

私、今回は本当に怒ってるんだから……!

そう腰に手を当てていると、叶がはぁとため息をつく。


「……俺、ずっと好きな子がいてさ」

「え?」


急に下を向いて話し始めた叶に、怒りを忘れてポカンとしてしまう。

そんな私をクスリと笑って、叶は続けた。


「ずっと独占したかったのに、我慢して我慢して……」


そこで叶は一度言葉を切って、こっちを向く。

その瞳にはドロリとした暗い感情が見えて、ゾクっとしたようなドキッとしたような、不思議な感情に包まれる。
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