運命の契約書

第16話 深まる愛情

○丸の内総合病院 恵子の病室 1週間後

恵子の顔色が良くなっている。美優と健人がお見舞いに来ている。

恵子:「もうこんなに元気になったわ」

美優:「良かった、お母さん」

健人:「先生も順調な回復だって言ってたよ」

恵子:「あの神崎さんという方のおかげね。お礼を言わないと」

美優:「お母さん…」

恵子:「美優、その方はあなたにとってどんな存在なの?」

美優、少し照れる。

美優:「とても…大切な人です」

恵子:「大切な人?」

健人:「お母さん、姉ちゃんには彼氏がいるんだよ」

美優:「健人!」

恵子、微笑む。

恵子:「そうなの。それで、お会いできるかしら?」

美優:「え?」

恵子:「娘がお世話になった方に、ちゃんとお礼を言いたいの」



○神崎グループビル 38階 専務室 昼

美優が蓮に母親の言葉を伝えている。

美優:「母が、蓮さんに直接お会いしてお礼を言いたいと」

蓮:「それは光栄です。ぜひお会いしたいです」

美優:「本当ですか?」

蓮:「当然です。美優さんのお母様ですから」

美優、嬉しそう。

美優:「でも、お忙しいでしょうし…」

蓮:「美優さん、またそんなことを言って」

優しく微笑む蓮。

蓮:「あなたの家族に会うことは、私にとって大切なことです」

美優:「ありがとうございます」

蓮:「今度の休日はいかがですか?」

美優:「はい。お願いします」



○丸の内総合病院 恵子の病室 休日

蓮が花束を持って病室を訪れる。美優と健人が迎える。

美優:「蓮さん、ありがとうございます」

蓮:「こちらこそ」

恵子のベッドサイドに近づく蓮。

蓮:「初めまして。神崎蓮と申します」

恵子:「この度は、本当にありがとうございました」

蓮:「いえいえ、当然のことをしただけです」

恵子:「当然だなんて…こんなに大きなご恩を」

蓮:「美優さんの大切なお母様ですから」

恵子、蓮の人柄に感動する。

恵子:「本当に立派な方ですね」

○病院 中庭 昼

蓮、美優、健人が中庭を散歩している。

健人:「蓮さん、俺からもお礼を言いたいです」

蓮:「健人君、気にしないでください」

健人:「でも、蓮さんがいなかったら…」

蓮:「家族が助け合うのは当たり前のことです」

健人:「家族?」

蓮:「あ…その」

蓮、少し照れる。美優も頬を染める。

健人:「蓮さん、姉ちゃんのこと本気で愛してくれてるんですね」

蓮:「はい」

健人:「だったら、俺も応援します」

美優、弟の言葉に感動する。

美優:「健人…」

健人:「姉ちゃんが幸せになれるなら、俺も嬉しいよ」


○神崎グループビル 15階 国際事業部 翌週

美優の表情が以前より明るくなっている。

田村:「横井さん、お母さんの具合はどう?」

美優:「おかげさまで、とても元気になりました」

佐藤:「良かった。心配してたんだ」

美優:「ありがとう。皆さんのおかげです」

鈴木係長:「家族が元気だと、仕事にも身が入るものね」

美優:「はい。改めて頑張ろうと思います」

美優の仕事ぶりも、より積極的になっている。



○神崎グループビル 38階 テラス 夕方

美優と蓮がテラスで東京の夕景を見ている。

美優:「蓮さん、本当にありがとうございました」

蓮:「もうお礼は十分聞きました」

美優:「でも、感謝の気持ちはいくら言っても足りません」

蓮:「美優さん」

美優:「はい」

蓮:「お母様が回復されて、私も嬉しいです」

美優:「蓮さんがいてくださったから」

蓮:「これからも、ずっとあなたのそばにいたいです」

美優、蓮を見つめる。

美優:「私も…蓮さんとずっと一緒にいたいです」

蓮、美優の手を取る。

蓮:「愛してます」

美優:「私も愛してます」

夕日の中でキスを交わす二人。


○高級レストラン 夜

宮下麻里子が財界人の山田会長(60代)と食事をしている。

山田会長:「麻里子ちゃん、蓮君のことで相談があるとか?」

麻里子:「はい。実は、蓮さんが不適切な関係を持っているようで…」

山田会長:「不適切な?」

麻里子:「学生との交際です」

山田会長、眉をひそめる。

山田会長:「学生と? それは問題だな」

麻里子:「神崎グループの専務という立場を考えると…」

山田会長:「確かに。株主総会でも問題になりかねない」

麻里子:「蓮さんのためにも、何とかしなければ」

山田会長:「わかった。私から話をしてみよう」

麻里子、内心でほくそ笑む。



○神崎グループビル 重役会議室 翌日

重役たちが会議の前に雑談している。

重役A:「専務が学生と交際してるという噂があるが…」

重役B:「本当ですか?」

重役C:「山田会長から聞いた話では確実らしい」

重役A:「それは問題だ。会社のイメージに関わる」

重役B:「株主に知られたら大変なことになる」

山田会長が会議室に入ってくる。

山田会長:「皆さん、今日は重要な議題があります」


○神崎グループビル 38階 専務室 午後

山田会長が蓮の部屋を訪れる。

山田会長:「神崎君、少し話がある」

蓮:「何でしょうか?」

山田会長:「君の私生活について、気になる情報が入ってきた」

蓮、表情を変える。

蓮:「私生活?」

山田会長:「学生との交際の件だ」

蓮:「…」

山田会長:「否定はしないのだな」

蓮:「プライベートなことです」

山田会長:「君は神崎グループの専務だ。プライベートも会社に影響する」

蓮:「それは…」

山田会長:「この件、株主総会で問題になる前に解決した方がいい」


○神崎グループビル 15階 国際事業部 同時刻

美優が仕事をしていると、周りの視線を感じる。

先輩社員A:「あの子、専務と付き合ってるって本当?」

先輩社員B:「らしいわね。重役の間でも話題になってるそうよ」

先輩社員A:「学生の身分で専務と…図々しいわね」

美優、その会話を聞いて動揺する。

田村:「横井さん、大丈夫?」

美優:「え? あ、はい」

佐藤:「なんか変な噂が流れてるけど、気にしちゃダメだよ」

美優、同期の優しさに救われる。

美優:「ありがとう」


○神崎グループビル 38階 専務室 夕方

蓮、一人で考え込んでいる。

モノローグ(蓮):「会社に迷惑をかけるわけにはいかない。でも、美優さんを失うことも考えられない」

田中秘書が入ってくる。

田中:「専務、山田会長からのお話、お聞きしました」

蓮:「噂になっているんですね」

田中:「しかし、専務のお気持ちを大切になさってください」

蓮:「ありがとうございます、田中さん」

田中:「横井さんも、きっと同じお気持ちだと思います」

蓮、窓の外を見つめる。

蓮:「彼女を守らなければ」


○丸の内公園 夜

蓮と美優がベンチで話している。

蓮:「美優さん、会社で何か言われませんでしたか?」

美優:「少し…でも気にしていません」

蓮:「すみません。私のせいで」

美優:「蓮さんのせいじゃありません」

蓮:「でも、あなたが辛い思いをするのは我慢できません」

美優:「私は大丈夫です」

蓮:「美優さん…」

美優:「私たちが愛し合っていることに、間違いはありません」

蓮、美優の強さに感動する。

蓮:「本当にそう思いますか?」

美優:「はい。蓮さんがお母さんを救ってくださった時に確信したんです」

美優:「この人となら、どんな困難も乗り越えられるって」



蓮:「美優さん、ありがとう」

美優:「何に対してですか?」

蓮:「私を信じてくれることに」

美優:「当然です。私は蓮さんを愛してますから」

蓮、美優を抱きしめる。

蓮:「どんなことがあっても、あなたを守ります」

美優:「私も蓮さんを支えます」

蓮:「二人なら大丈夫ですね」

美優:「はい」

星空の下、深くキスを交わす二人。


○高級マンション 麻里子の部屋 夜

麻里子が電話で誰かと話している。

麻里子:「重役たちも動き始めたようね」

相手(電話越し):「はい。会社としても問題視し始めています」

麻里子:「完璧よ。もうすぐ蓮さんも目を覚ますはず」

相手:「横井さんの方は?」

麻里子:「まだ諦めていないようね。でも、会社の圧力には勝てないでしょう」

麻里子、ワインを傾ける。

宮下麻里子:「蓮さんは私のものよ」



○美優のアパート 深夜

美優、机に向かって何かを書いている。

モノローグ(美優):「蓮さんに迷惑をかけるわけにはいかない。でも、諦めるつもりもない」

健人が起きてくる。

健人:「姉ちゃん、まだ起きてるの?」

美優:「うん。ちょっと考え事」

健人:「神崎さんのこと?」

美優:「健人はどう思う? 私が蓮さんと一緒にいることで、蓮さんに迷惑をかけてしまうかも」

健人:「姉ちゃんが幸せなら、それでいいよ」

美優:「でも…」

健人:「蓮さんだって、姉ちゃんと一緒にいたいから一緒にいるんでしょ?」

美優、健人の言葉に励まされる。

美優:「そうね。ありがとう、健人」

○神崎グループビル 蓮の専務室 同時刻

蓮、夜景を見ながら。

モノローグ(蓮):「会社からの圧力が強くなっても、美優さんを手放すつもりはない。彼女との愛を貫き通す」

ナレーション(美優):「母の回復を通じて、私たちの絆はより深くなった。でも、新たな試練が待ち受けているのも事実。それでも、蓮さんと一緒なら、きっと乗り越えられる──」




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