運命の契約書

第17話 会社からの圧力

○神崎グループビル 重役会議室 朝

重役たちが集まって緊急会議を開いている。

山田会長:「今日は神崎専務の私生活について話し合いたい」

重役A:「学生との交際の件ですね」

重役B:「会社のイメージに関わる重大な問題です」

重役C:「株主にも動揺が広がっています」

山田会長:「このままでは会社全体の信用問題になりかねない」

重役A:「専務にはしかるべき対処をしていただかないと」

重役B:「交際をやめていただくか、それとも…」

山田会長:「まずは専務と直接話をしよう」


○神崎グループビル 38階 専務室 同時刻

田中秘書が緊張した面持ちで蓮に報告している。

田中:「専務、重役会議室にお呼びです」

蓮:「議題は?」

田中:「…個人的な件についてとのことです」

蓮、覚悟を決めた表情。

蓮:「わかりました」

田中:「専務…」

蓮:「大丈夫です、田中さん」

立ち上がる蓮。田中秘書、心配そうに見送る。


○神崎グループビル 重役会議室

蓮が入室すると、重役たちが厳しい表情で待っている。

山田会長:「神崎君、座りたまえ」

蓮:「はい」

山田会長:「インターンの学生との交際について聞きたい」

蓮:「…はい」

重役A:「事実なのか?」

蓮:「はい、事実です」

重役たちがざわめく。

重役B:「専務という立場を考えているのか?」

蓮:「もちろんです」

重役C:「それなのになぜ学生と?」

蓮:「彼女は優秀で、人格も素晴らしい女性です」

山田会長:「それは個人的な感情だろう」

蓮:「はい、そうです」


山田会長:「蓮君、会社の立場も考えてくれ」

蓮:「どういうことでしょうか?」

重役A:「株主や取引先からも疑問の声が上がっている」

重役B:「『専務が学生と遊んでいる』という見方をされている」

蓮:「遊んでなどいません」

重役C:「しかし世間はそう見ない」

山田会長:「この交際は即刻やめていただきたい」

蓮、強い口調で。

蓮:「それはできません」

重役A:「なぜだ?」

蓮:「彼女を愛しているからです」

山田会長:「愛? 会社よりも一人の女性を取るというのか?」

蓮:「会社も大切ですが、彼女も同じように大切です」


山田会長:「蓮君、よく考えてくれ」

蓮:「考える必要はありません」

重役A:「専務の座を失ってもいいのか?」

蓮:「必要であれば」

重役たち、驚愕する。

重役B:「正気か?」

蓮:「正気です」

山田会長:「一週間の猶予を与える。その間によく考えることだ」

蓮:「答えは変わりません」

山田会長:「それでも一週間だ。それまでに答えを聞かせてもらう」

蓮、立ち上がる。

蓮:「わかりました」



○神崎グループビル 15階 国際事業部 昼

美優の周りの空気が明らかに変わっている。同僚たちが距離を置いている。

先輩社員A:「あの子のせいで、専務が重役会議に呼ばれたらしいわ」

先輩社員B:「会社にとって迷惑な存在よね」

美優、その会話を聞いて萎縮する。

田村:「横井さん、気にしちゃダメよ」

美優:「でも…」

佐藤:「僕たちは横井の味方だから」

美優:「ありがとう」

しかし、美優の表情は暗い。



鈴木係長が美優を呼び出す。

鈴木係長:「横井さん、ちょっと話がある」

美優:「はい」

○神崎グループビル 15階 会議室

鈴木係長:「最近の状況、辛いでしょう?」

美優:「…はい」

鈴木係長:「でも、あなたは何も悪いことをしていない」

美優:「でも、会社に迷惑を…」

鈴木係長:「愛することに迷惑もへったくれもないわ」

美優、係長の言葉に励まされる。

鈴木係長:「ただし、覚悟は必要よ」

美優:「覚悟?」

鈴木係長:「本気で専務を愛しているなら、どんな困難も乗り越える覚悟が」

美優:「はい」


○高級ホテル ラウンジ 夕方

宮下麻里子が週刊誌の記者と会っている。

記者:「神崎グループの専務のスキャンダルですね」

麻里子:「スキャンダルだなんて。ただ、会社にとって好ましくない状況だということです」

記者:「写真もありますし、記事にしがいがあります」

麻里子:「でも、あまり激しい書き方はしないでください」

記者:「わかっています。品良く書きますよ」

麻里子、満足そうな表情。

麻里子:「蓮さんのためですから」



○神崎グループビル 15階 国際事業部 翌日

美優が席に着くと、周りが急に静かになる。

モノローグ(美優):「みんなが私を避けてる…」

昼休み時間、食堂で一人で食事を取る美優。他の社員たちが遠巻きに見ている。

田村:「横井さん」

田村と佐藤がやってくる。

佐藤:「一緒に食べよう」

美優:「でも、皆さんに迷惑をかけてしまいます」

田村:「何言ってるの。私たちは友達でしょ」

美優、涙ぐむ。

美優:「ありがとう」



○神崎グループビル 38階 専務室 夕方

蓮、一人で考え込んでいる。

モノローグ(蓮):「美優さんがつらい思いをしているのは間違いない。私のせいで…」

田中秘書が入ってくる。

田中:「専務、お疲れさまです」

蓮:「田中さん、美優さんの様子はどうですか?」

田中:「正直に申し上げて、厳しい状況です」

蓮:「やはり…」

田中:「でも、彼女は頑張っていらっしゃいます」

蓮:「そうですか」

田中:「専務はどうなさるおつもりですか?」

蓮:「決意は変わりません。彼女を守り抜きます」


○丸の内公園 夜

人目を避けるように公園で会う美優と蓮。

蓮:「美優さん、つらい思いをさせてしまって」

美優:「大丈夫です」

蓮:「大丈夫じゃありません。あなたが孤立しているのがわかります」

美優:「でも、私は…」

蓮:「会社から一週間の猶予をもらいました」

美優:「一週間?」

蓮:「交際をやめるか、会社を辞めるかの最終回答を求められています」

美優、ショックを受ける。

美優:「そんな…」

蓮:「美優さん、もう限界かもしれません」

美優:「限界って…まさか」

蓮:「あなたを守るためには、私が身を引いた方がいいのかもしれません」

美優:「そんなこと言わないでください」



美優:「蓮さん、私のために会社を辞めるなんて絶対にダメです」

蓮:「でも…」

美優:「蓮さんにとって会社がどれほど大切か知っています」

蓮:「あなたの方が大切です」

美優:「だったら、一緒に戦いましょう」

蓮:「美優さん…」

美優:「逃げるのはもうやめます」

蓮、美優の決意に心を打たれる。

蓮:「本当にいいのですか? これからもっと厳しくなります」

美優:「蓮さんと一緒なら、どんなことも乗り越えられます」

蓮:「ありがとう」

抱き合う二人。



○神崎グループビル 1階エントランス 翌日

美優が出社しようとすると、記者に囲まれる。

記者A:「横井さん! 神崎専務との交際についてコメントを」

記者B:「会社に迷惑をかけていることをどう思いますか?」

美優:「あの…すみません」

慌てる美優。そこに蓮が現れる。

蓮:「彼女に近づかないでください」

記者A:「専務! 交際の事実を認めますか?」

蓮:「ノーコメントです」

蓮、美優を守るようにして建物内に入る。

記者B:「逃げるんですか?」



○神崎グループビル 15階 国際事業部

記者騒動で、美優と蓮の関係が社内の誰もが知るところとなる。

先輩社員A:「ついに表沙汰になったわね」

先輩社員B:「これで専務も観念するでしょう」

美優、周囲の冷たい視線に耐えながら仕事を続ける。

田村:「横井さん、大丈夫?」

美優:「頑張る」

佐藤:「僕たちがついてるから」

美優:「ありがとう」



○美優のアパート 夜

健人が心配そうに姉を見ている。

健人:「姉ちゃん、本当に大丈夫?」

美優:「大丈夫」

健人:「でも、テレビのニュースでも取り上げられてたよ」

美優:「知ってる」

健人:「神崎さんは?」

美優:「明日、重役会議で最終回答をすることになってる」

健人:「もし神崎さんが会社を辞めることになったら…」

美優:「そうならないよう祈ってる」

健人:「姉ちゃん…」

美優:「でも、どんな結果になっても、私は蓮さんを支えるつもり」

健人、姉の決意を感じ取る。

健人:「俺も応援してる」

美優:「ありがとう、健人」

○神崎グループビル 蓮の専務室 同時刻

蓮、夜景を見ながら最後の夜を過ごしている。

モノローグ(蓮):「明日ですべてが決まる。美優さんのためにも、後悔しない選択をしよう」

机の上には美優との写真が置いてある。

蓮:「愛している、美優さん」

ナレーション(美優):「ついに私たちの恋愛が世間に知られてしまった。明日、蓮さんが下す決断によって、私たちの運命が決まる。どんな結果になっても、私は蓮さんと共に歩んでいく──」


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