運命の契約書

第21話 異国での試練

○東南アジア某国 高級住宅街 朝 1週間後

美優と蓮が会社が用意したアパートメントに引っ越している。現代的で設備の整った住居。

美優:「素敵なお部屋ですね」

蓮:「会社が手配してくれました」

美優:「ここが私たちの新しい家なんですね」

蓮:「はい。3年間、よろしくお願いします」

微笑み合う二人。

蓮:「美優さん、今日から私は現地事務所に出勤します」

美優:「わかりました。私も早く現地の生活に慣れるよう頑張ります」

蓮:「無理をしないでくださいね」

美優:「大丈夫です」

蓮を見送る美優。一人になった途端、不安な表情を見せる。



○アパート近くのスーパーマーケット 昼

美優が買い物に出かける。現地語の商品表示に困惑している。

美優:「これは何だろう…」

現地の店員に英語で話しかける。

美優(英語で):「Excuse me, what is this?」

店員(現地語で):(現地語での回答)

美優、理解できずに困った表情。

美優(英語で):「I don't understand...」

店員:(困ったような表情で現地語を続ける)

美優、諦めて適当な商品を手に取る。

モノローグ(美優):「言葉って、こんなに大切なものだったんだ」


○現地事務所 夜

蓮がまだ残業をしている。現地スタッフと打ち合わせ。

現地スタッフA:「カンザキさん、明日も朝8時からミーティングです」

蓮:「わかりました」

現地スタッフB:「来週は地方の建設現場の視察もあります」

蓮:「忙しくなりますね」

時計を見ると夜の10時を回っている。

蓮:「今日はこの辺りで失礼します」

モノローグ(蓮):「美優さん、一人で大丈夫だろうか」



○アパート 夜

美優が一人で簡単な夕食を取っている。蓮の帰りを待っていたが、疲れて先に食べ始めた。

美優:「蓮さん、遅いなあ」

携帯を見るがメッセージはない。

モノローグ(美優):「お仕事だから仕方ないけれど…日本にいた時より忙しそう」

蓮が帰宅する。

蓮:「ただいま。遅くなってすみません」

美優:「お疲れさま。お夕飯は?」

蓮:「現地スタッフと会食でした」

美優:「そうなんですね」

少し寂しそうな美優。

蓮:「明日からもしばらく忙しくなりそうです」

美優:「わかりました」



○アパート 翌朝

美優が体調を崩している。熱っぽく、頭痛もある。

美優:「頭が痛い…」

蓮が出勤準備をしている。

蓮:「美優さん、顔色が悪いですが」

美優:「少し疲れただけです。大丈夫」

蓮:「でも…」

美優:「お仕事、行ってください。大切な初週ですから」

蓮:「本当に大丈夫ですか?」

美優:「はい」

蓮、心配しながらも出勤する。

蓮:「何かあったらすぐに連絡してください」

美優、一人になってベッドに倒れ込む。

モノローグ(美優):「慣れない環境のせいかな…」



○現地の病院 昼

美優が体調不良で病院を訪れる。受付で困惑している。

受付(現地語):(現地語での質問)

美優(英語で):「I don't feel well...」

受付(英語で):「You need insurance card」

美優:「Insurance card?」

美優、保険証を持参していないことに気づく。

受付:「No insurance, you pay cash. Very expensive」

美優:「How much?」

受付:「200 dollars for consultation」

美優、その金額に驚く。実は麻里子が現地の協力者を通じて、美優の保険手続きを意図的に遅らせていた。

美優:「I understand...」

仕方なくその場は帰ることにする。



○アパート 夕方

美優が一人でソファに座っている。体調は相変わらず悪い。

モノローグ(美優):「病院にも一人で行けない。言葉もわからない。蓮さんは忙しくて…」

涙がこぼれる。

美優:「日本にいる時は、こんなに無力じゃなかったのに」

携帯で日本の家族に連絡しようとするが、時差を考えて躊躇する。

モノローグ(美優):「心配をかけたくない」

蓮からメッセージが届く。

メッセージ:「今日も遅くなります。先に夕食を取っていてください」

美優、失望の表情。

美優:「また…」


○アパートの共用スペース 翌日

美優が共用のプールサイドで一人でいると、現地の女性・リナ(25)が声をかけてくる。実は麻里子に雇われた工作員。

リナ(英語で):「Hello! You are new resident?」

美優(英語で):「Yes, I just moved here」

リナ:「I'm Lina. Nice to meet you」

美優:「I'm Miyu. Nice to meet you too」

リナ:「You look sad. Everything okay?」

美優、少し安心する。

美優:「I'm just... adjusting to life here」

リナ:「It's hard at first. I can help you!」

美優:「Really? Thank you so much」

リナ:「Where is your boyfriend? Husband?」

美優:「He's working. Very busy...」

リナ:「Ah, Japanese businessman. Always working, right?」

意味深な表情のリナ。


○現地のカフェ 午後

リナが美優をカフェに誘う。

リナ:「This is very good local coffee」

美優:「Thank you for bringing me here」

リナ:「Your boyfriend, he works with international project?」

美優:「Yes, very important project」

リナ:「Hmm... be careful」

美優:「Careful?」

リナ:「Japanese men here... sometimes they change」

美優:「Change?」

リナ:「Long distance from Japan, stress of work... they find local girlfriend sometimes」

美優、ショックを受ける。

美優:「But Ren is not that kind of person」

リナ:「I hope so. But I've seen many cases...」

美優の心に不安の種が植えられる。


○アパート 夜

蓮が帰宅するが、疲れ切っている。

蓮:「ただいま」

美優:「お疲れさま」

蓮:「今日は本当に疲れました」

ソファに座り込む蓮。

美優:「何か飲み物をお持ちします」

蓮:「ありがとう」

美優がお茶を入れて戻ると、蓮はソファで眠ってしまっている。

美優:「蓮さん…」

毛布をかけてあげる美優。

モノローグ(美優):「こんなに疲れてるのね。でも、私のことも…」

リナの言葉を思い出す。

モノローグ(美優):「まさか、蓮さんが変わるなんて…」



○現地事務所 翌日

蓮が現地スタッフのソムチャイ(30)と打ち合わせをしている。

ソムチャイ:「カンザキさん、今夜は現地の重要な取引先との会食があります」

蓮:「わかりました」

ソムチャイ:「彼らの秘書も同席します。とても美しい女性ですよ」

蓮:「仕事の場ですから、そういうことは関係ありません」

ソムチャイ:「もちろんです。でも、現地の文化も理解する必要がありますから」

蓮、少し困惑する。


○高級レストラン 夜

蓮が現地の取引先と会食している。美しい現地女性・プイ(26)が同席している。

取引先:「プイは私の秘書です。日本語も話せます」

プイ(日本語で):「カンザキさん、はじめまして」

蓮:「はじめまして」

プイ:「日本が恋しくありませんか?」

蓮:「時々は」

プイ:「私がご案内します。この国の良いところを」

蓮、丁寧に断る。

蓮:「お気遣いありがとうございますが、婚約者がおりますので」

プイ:「婚約者さんは?」

蓮:「日本から一緒に来ています」

プイ:「そうですか。でも、お仕事でお忙しいでしょうから、寂しくなったらいつでもお声かけください」

意味深な笑みのプイ。



○アパート 夜遅く

蓮が帰宅すると、美優が起きて待っている。

美優:「お疲れさま。会食はいかがでしたか?」

蓮:「現地の取引先との重要な打ち合わせでした」

美優:「どんな方たちだったんですか?」

蓮:「現地の企業の方々です」

美優、もう少し詳しく聞きたいが、蓮が疲れているのを見て遠慮する。

美優:「そうですか」

蓮:「美優さん、体調はどうですか?」

美優:「大丈夫です」

しかし、リナの言葉が頭から離れない。

モノローグ(美優):「蓮さん、何か隠してる?」



○アパート 翌朝

美優に健人から電話がかかってくる。

健人(電話越し):「姉ちゃん、元気?」

美優:「元気よ」

健人:「本当? 声が元気ないけど」

美優:「少し疲れてるだけ」

健人:「無理しちゃダメだよ。蓮さんは?」

美優:「お仕事で忙しくて」

健人:「そっか。でも、二人で支え合ってね」

美優:「わかってる」

電話を切った後、涙が出る美優。

美優:「支え合う…そうできてるかな」


○アパート 夕方

美優が再び体調を崩して寝込んでいる。蓮からメッセージが届く。

メッセージ:「急な出張が入りました。3日間現地を離れます。体調に気をつけて」

美優、一人で病気と戦わなければならない現実に直面する。

美優:「一人で…3日間も」

リナからも連絡が来る。

リナのメッセージ:「大丈夫? 助けが必要なら言って」

美優、リナに頼るしかない状況。

返信:「ありがとう。少し体調が悪くて」

リナの返信:「すぐ行く。薬も持参する」

○現地の高級ホテル 同時刻

蓮が出張先で仕事をしている。美優のことが心配だが、重要な商談で手が離せない。

モノローグ(蓮):「美優さん、一人で大丈夫だろうか。でも、この商談は失敗できない」

○日本 麻里子のマンション 同時刻

麻里子が現地からの報告を受けている。

宮下麻里子(電話で):「計画通り進んでいるわね」

現地協力者:「はい。彼女は完全に孤立し始めています」

宮下麻里子:「素晴らしい。この調子で続けて」

満足そうな麻里子。

ナレーション(美優):「異国での生活は、想像以上に過酷だった。言葉の壁、文化の違い、そして何より蓮さんとすれ違い始めている現実。私たちの愛は、この試練に耐えることができるのだろうか──」


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