運命の契約書

第23話 決定的な証拠

○アパート 朝 数日後

美優と蓮が一緒に朝食を取っている。表面的には和解したが、まだぎこちない。

蓮:「今日は早く帰るようにします」

美優:「お仕事、無理しないでください」

蓮:「美優さんとの時間を大切にしたいですから」

美優:「ありがとうございます」

微笑み合うが、どこか不自然な二人。

蓮:「そうだ、今度の週末、現地の観光地に行きませんか?」

美優:「いいですね」

蓮:「久しぶりに二人だけの時間を過ごしましょう」

美優:「はい」

蓮が出勤の支度を始める。

蓮:「今日はプイさんと重要なプレゼンテーションがあります」

美優、プイの名前に微かに反応する。

美優:「そうですか」

蓮:「彼女は本当に優秀で、現地のことをよく知っているんです」

美優の表情が少し曇る。



○アパート プールサイド 昼

美優がリナと会っている。

リナ(英語で):「You look better today」

美優(英語で):「Yes, Ren and I talked. We're trying to work things out」

リナ:「That's good... but be careful」

美優:「Careful of what?」

リナ:「Men say sweet things when they feel guilty」

美優、不安になる。

美優:「What do you mean?」

リナ:「Maybe he's being extra nice because he's hiding something」

美優:「Ren wouldn't...」

リナ:「I hope you're right. But I saw something yesterday...」

美優:「Saw what?」

リナ、躊躇うふりをする。

リナ:「Maybe I shouldn't tell you...」

美優:「Please, tell me」

リナ:「I saw your boyfriend with a beautiful local woman. They looked... close」

美優、ショックを受ける。



○リナのアパート 夜

リナが部屋で麻里子と電話している。机の上には蓮とプイが仕事で話している写真がある。

リナ(電話で):「写真の準備は完了です」

宮下麻里子(電話越し):「どのような写真?」

リナ:「彼と現地の女性が親しそうに話している写真です」

宮下麻里子:「完璧ね。でも、ただの仕事の写真では?」

リナ:「角度を工夫しました。とても親密に見えます」

宮下麻里子:「素晴らしい。いつ見せるの?」

リナ:「明日、彼女がパニックに陥るタイミングで」

宮下麻里子:「楽しみね」

リナ、写真を見ながら微笑む。



○現地事務所 翌日昼

蓮とプイが会議室でプレゼンテーションの準備をしている。

プイ(日本語で):「カンザキさん、この資料の説明はいかがですか?」

蓮:「とても分かりやすいです。プイさんのおかげです」

プイ:「お役に立てて嬉しいです」

プイが資料を指差しながら蓮に近づく。二人が同じ資料を見る姿は、傍から見ると親密に映る。

蓮:「美優さんにも紹介したいのですが、まだ会ってもらえなくて」

プイ:「彼女、嫉妬しているのかもしれませんね」

蓮:「嫉妬?」

プイ:「私たち、よく一緒に仕事をしていますから」

蓮:「仕事ですから、問題ないと思うのですが…」

プイ、内心で微笑む。

プイ:「女性の気持ちは複雑です」


○アパート プールサイド 夕方

美優がリナと話している。リナ、徐々に核心に迫る。

リナ:「How was your day?」

美優:「Okay... but I keep thinking about what you said yesterday」

リナ:「About your boyfriend?」

美優:「Yes. You said you saw him with someone...」

リナ:「Miu, maybe you should know the truth」

美優、緊張する。

美優:「What truth?」

リナ:「I have something to show you, but it might hurt」

美優:「Show me」

リナ:「Are you sure?」

美優:「Please」

リナ、携帯から写真を見せる。蓮とプイが資料を見ながら親しそうに話している写真。角度が巧妙で、まるで恋人同士のように見える。

美優:「This is...」

リナ:「Your boyfriend and that woman. Yesterday at his office」

美優、血の気が引く。



美優:「How did you...?」

リナ:「I was passing by his building. I'm sorry, Miu」

美優:「They look so... close」

リナ:「I didn't want to show you, but you deserve to know」

美優、写真を見つめて涙ぐむ。

美優:「He lied to me...」

リナ:「Men are all the same. Especially when they're away from home」

美優:「I trusted him...」

リナ:「I'm so sorry. You deserve better」

美優、完全に打ちのめされる。

美優:「I need to go home」

リナ:「Want me to come with you?」

美優:「No... I need to be alone」

リナ、内心で勝利を確信する。


○アパート 夜

美優が一人でソファに座り、写真を見つめている。涙が止まらない。

モノローグ(美優):「やっぱりそうだったんだ。リナの言う通りだった」

携帯に蓮からメッセージが届く。

メッセージ:「プレゼンテーション成功しました。今日は遅くなります」

美優、そのメッセージを見て更につらくなる。

美優:「プレゼンテーション…あの女性と一緒に」

写真を握りしめる。

モノローグ(美優):「もう信じられない。何もかも嘘だったのね」



○アパート 深夜

蓮が帰宅すると、美優がリビングで待っている。目が赤く腫れている。

蓮:「美優さん? どうしたんですか?」

美優:「お疲れさまでした」

冷たい口調。

蓮:「泣いていたんですか?」

美優:「プレゼンテーション、成功したそうですね」

蓮:「はい。プイさんのおかげで…」

美優:「プイさん」

美優、写真を取り出す。

美優:「この方ですか?」

蓮、写真を見て驚く。

蓮:「これは…どこで?」

美優:「やはりご存じなんですね」

蓮:「これは仕事中の写真ですが…」

美優:「仕事? こんなに親しそうに?」

蓮:「美優さん、誤解です」

美優:「誤解? 何が誤解なんですか?」


蓮:「これはただの仕事の打ち合わせです」

美優:「こんな風に見つめ合うのが仕事なんですか?」

蓮:「見つめ合うって…そんなつもりは」

美優:「つまり、無意識にやっていたということですね」

蓮:「そういう意味ではありません」

美優:「だったらどういう意味ですか?」

蓮、説明に困る。

蓮:「美優さん、私はあなただけを愛しています」

美優:「それなのに他の女性とこんな写真を撮られるんですか?」

蓮:「撮られる? 誰が撮ったんですか?」

美優:「それが重要ですか? 重要なのは、あなたがこの女性と親しいという事実です」

蓮:「親しくありません。同僚です」

美優:「同僚にこんな風に微笑みかけるんですか?」

蓮、写真を詳しく見る。確かに親密に見える角度で撮影されている。

蓮:「これは…意図的に撮られたもののようです」

美優:「言い訳ですか?」

蓮:「言い訳ではありません」


美優:「蓮さん、私はあなたを信じていました」

蓮:「今も信じてください」

美優:「無理です」

蓮:「なぜですか?」

美優:「だって、証拠があるじゃないですか」

写真を振りかざす美優。

美優:「あなたが他の女性と親しくしている証拠が」

蓮:「美優さん、お願いします。冷静になってください」

美優:「冷静? 私のどこが冷静じゃないんですか?」

蓮:「その写真は罠かもしれません」

美優:「罠? まさか私が仕組んだとでも?」

蓮:「そういう意味ではありません」

美優:「だったらどういう意味ですか?」

蓮、答えに詰まる。

美優:「もういいです。何を言っても言い訳にしか聞こえません」



美優:「蓮さん、しばらく離れて暮らしましょう」

蓮:「え?」

美優:「私、別の場所を探します」

蓮:「待ってください。そんな…」

美優:「もう一緒にいるのがつらいんです」

蓮:「美優さん、お願いです。もう一度話し合いましょう」

美優:「話し合うことなんてありません」

蓮:「あります。私の気持ちを聞いてください」

美優:「聞きたくありません」

美優、寝室に向かう。

美優:「明日、荷物をまとめて出て行きます」

蓮:「美優さん!」

ドアが閉まる。蓮、一人リビングに残される。


○寝室 深夜

美優がベッドで泣いている。

モノローグ(美優):「もう終わりなのね。私たちの愛は幻だったのね」

○リビング 同時刻

蓮がソファで頭を抱えている。

モノローグ(蓮):「どうして美優さんにわかってもらえないんだ。私は何も悪いことをしていないのに」

○リナのアパート 同時刻

リナが麻里子に成功を報告している。

リナ(電話で):「完璧でした。彼女は完全に彼を疑っています」

宮下麻里子(電話越し):「素晴らしい。別居するの?」

リナ:「明日出て行くそうです」

宮下麻里子:「これで第一段階は完了ね」


○アパート 朝

美優がスーツケースをまとめている。蓮が止めようとする。

蓮:「美優さん、お願いです。出て行かないでください」

美優:「決めたことです」

蓮:「どこに行くつもりですか?」

美優:「リナがホテルを紹介してくれました」

蓮:「そのリナという人は一体…」

美優:「私の唯一の友人です」

蓮:「美優さん、その人に騙されているかもしれません」

美優:「騙されているのは私の方ですか?」

蓮:「そういう意味では…」

美優:「もう何も言わないでください」

美優、スーツケースを持って玄関に向かう。

美優:「さようなら、蓮さん」

蓮:「美優さん!」

ドアが閉まる。蓮、一人残される。



○安ホテル 昼

美優が質素なホテルの部屋にいる。リナが付き添っている。

リナ(英語で):「This hotel is cheap but clean」

美優(英語で):「Thank you, Lina. I don't know what I'd do without you」

リナ:「You made the right choice. You deserve better」

美優:「I loved him so much...」

リナ:「Love is not enough sometimes」

美優、涙を流す。

○アパート 同時刻

蓮が一人で美優の写真を見ている。

モノローグ(蓮):「美優さん…どうすれば信じてもらえるんだ」

携帯を手に取るが、連絡することを躊躇する。

蓮:「きっと話も聞いてもらえない」


○現地事務所 夕方

蓮が仕事に集中しようとするが、プイが心配して声をかける。

プイ(日本語で):「カンザキさん、大丈夫ですか? 元気がありませんね」

蓮:「婚約者と…少し問題があって」

プイ:「そうですか。お辛いでしょうね」

蓮:「私のせいで彼女を傷つけてしまいました」

プイ:「きっと誤解ですよ。時間が解決してくれます」

蓮、プイの優しさに少し慰められる。

蓮:「ありがとうございます」

○安ホテル 同時刻

美優が窓から外を見ている。

モノローグ(美優):「これで良かったのかな…でも、もう後戻りはできない」

○日本 麻里子のマンション 同時刻

麻里子がワインを飲みながら満足している。

宮下麻里子:「計画通り進んでいるわね。あと少しで蓮さんは私のもの」

ナレーション(美優):「私たちの愛は、ついに壊れてしまった。写真という決定的な証拠の前に、信頼は粉々に砕け散った。でも、本当にこれで良かったのだろうか。まだ知らない真実があるのではないだろうか──」


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