運命の契約書

第24話 それぞれの道

○安ホテル 美優の部屋 朝

美優が質素なホテルの部屋で目を覚ます。窓の外は曇り空。表情は沈んでいるが、以前より落ち着いている。

モノローグ(美優):「一週間が過ぎた。まだ辛いけれど、少しずつ現実を受け入れられるようになった」

洗面台で顔を洗いながら鏡を見る。やつれているが、目に決意の光が宿っている。

美優:「新しい生活を始めなければ」

携帯を見ると、蓮からの不在着信が10件以上ある。すべて無視している。

モノローグ(美優):「もう振り返らない」



○アパート 朝 同時刻

蓮が一人で朝食を取っている。美優の分まで用意してしまい、現実に気づいて愕然とする。

蓮:「また作ってしまった…」

美優の写真を見つめる。

モノローグ(蓮):「美優さん、元気にしているだろうか。連絡しても出てくれない」

携帯で美優に電話をかけるが、またもや留守番電話。

蓮:「美優さん、お元気ですか。話がしたいんです。お願いします」

メッセージを残すが、返信が来ないことを知っている。

モノローグ(蓮):「どうすれば信じてもらえるんだ」


○現地の人材派遣会社 昼

美優が英語で面接を受けている。

面接官(英語で):「So you want to work here temporarily?」

美優(英語で):「Yes, I need to support myself」

面接官:「Your English is good. We have a position at international NGO」

美優:「NGO?」

面接官:「They help local children. Educational support」

美優、興味を示す。

美優:「That sounds meaningful」

面接官:「Can you start next week?」

美優:「Yes, I can」

面接後、ホッとした表情の美優。

モノローグ(美優):「仕事があれば、生活の基盤ができる。自分の足で立てる」


○ホテルのロビー 夕方

美優がリナと会っている。

リナ(英語で):「You got the job? That's great!」

美優(英語で):「Yes, thanks to your recommendation」

リナ:「You're strong, Miyu. Stronger than you think」

美優:「I have to be」

リナ:「Have you heard from your ex-boyfriend?」

美優、少し表情を曇らせる。

美優:「He keeps calling, but I don't answer」

リナ:「Good. You don't need that drama」

美優:「Sometimes I wonder if I made the right choice...」

リナ:「Trust me, you did. Men like him never change」

美優、リナの言葉に納得したような表情。

美優:「You're right」



○現地事務所 夜

蓮が遅くまで残業している。プイが心配して声をかける。

プイ(日本語で):「カンザキさん、また遅いですね」

蓮:「仕事に集中していると、他のことを忘れられるので」

プイ:「それは健康に良くありません」

蓮:「大丈夫です」

プイ:「婚約者の方とは、まだ連絡が取れないのですか?」

蓮、苦しそうな表情。

蓮:「彼女は私を信じてくれません」

プイ:「時間が解決してくれます」

蓮:「そうでしょうか…」

プイ:「きっと」

プイ、蓮の肩にそっと手を置く。蓮、その優しさに少し慰められる。

蓮:「ありがとうございます、プイさん」



○NGO事務所 翌週

美優が現地の子供たちに英語を教えている。子供たちが楽しそうに学んでいる。

子供A(英語で):「Miss Miu, you're a good teacher!」

美優(英語で):「Thank you! You're all good students」

同僚(英語で):「The children love you already」

美優:「They're so sweet」

同僚:「You seem to enjoy working with them」

美優:「Yes, it gives me purpose」

美優、久しぶりに心からの笑顔を見せる。

モノローグ(美優):「子供たちと一緒にいると、心が軽くなる。これが私の新しい道なのかもしれない」


○ホテル 美優の部屋 夜

美優に健人から電話がかかってくる。

健人(電話越し):「姉ちゃん、元気?」

美優:「元気よ。健人は?」

健人:「俺は大丈夫。でも、姉ちゃんのこと心配してる」

美優:「心配しないで。お仕事も見つかったし」

健人:「そっか。でも、蓮さんのことは?」

美優、少し沈黙する。

美優:「もう終わったのよ」

健人:「え? 何があったの?」

美優:「色々あって…私たちには無理だったの」

健人:「でも、あんなに愛し合ってたじゃん」

美優:「愛だけじゃ乗り越えられないこともあるのよ」

健人:「姉ちゃん…」

美優:「健人、心配しないで。私は大丈夫」

健人:「本当に?」

美優:「本当よ。新しい人生を歩いているから」



○高級レストラン 夜

蓮が一人で食事をしている。周りは皆カップルや家族連れ。

モノローグ(蓮):「美優さんと一緒に来たかった場所だ」

料理に手をつけられずにいる。

ウェイター(英語で):「Is everything okay, sir?」

蓮(英語で):「Yes, thank you」

モノローグ(蓮):「彼女なしでは、何を食べても味がしない」

携帯を見ると、美優からの連絡はない。

蓮:「もう私のことを忘れてしまったのだろうか」



○現地事務所 翌日

蓮が疲れ切った様子で仕事をしていると、プイがコーヒーを持ってくる。

プイ(日本語で):「コーヒーをお持ちしました」

蓮:「ありがとうございます」

プイ:「カンザキさん、最近お疲れのようですね」

蓮:「少し寝不足で」

プイ:「今度の週末、現地の祭りがあります。気分転換にいかがですか?」

蓮:「お気遣いありがとうございますが…」

プイ:「一人でいると余計に辛くなりますよ」

蓮、迷う。

蓮:「そうかもしれませんね」

プイ:「それでは、ご一緒させていただきます」

蓮:「はい…ありがとうございます」

プイ、内心で微笑む。



○NGO事務所 昼

美優が現地スタッフと会議をしている。

現地スタッフ(英語で):「Miyu, your project proposal is excellent」

美優(英語で):「Thank you. I want to help these children」

現地スタッフ:「You have a natural talent for this work」

美優:「It's meaningful to me」

現地スタッフ:「Would you consider staying longer than planned?」

美優、その提案に驚く。

美優:「Longer?」

現地スタッフ:「We'd like you to lead a new education program」

美優:「That's... I need to think about it」

現地スタッフ:「Of course. Take your time」

会議後、美優が一人で考えている。

モノローグ(美優):「もっと長く? ここに残るということ?」



○ホテル 美優の部屋 夜

美優が竹内由香に電話をかける。

美優:「由香、元気?」

竹内由香(電話越し):「美優! 久しぶり! どうしてる?」

美優:「実は…蓮さんと別れたの」

竹内由香:「え? 何があったの?」

美優、事情を説明する。

竹内由香:「そんな…でも、本当にそれで良かったの?」

美優:「わからない…でも、もう戻れないと思う」

竹内由香:「美優…」

美優:「今はNGOで働いてるの。現地の子供たちを教えてる」

竹内由香:「それは素晴らしいじゃない」

美優:「そうね。やりがいがあるの」

竹内由香:「でも、心の傷は癒えた?」

美優:「少しずつ…時間が解決してくれるって信じてる」


○現地の伝統祭り 週末

蓮とプイが一緒に祭りを見物している。色とりどりの衣装を着た人々が踊っている。

プイ(日本語で):「いかがですか? 美しいでしょう?」

蓮:「はい、とても」

プイ:「これが私たちの文化です」

蓮:「素晴らしいですね」

プイ:「カンザキさんも少し笑顔が戻りましたね」

蓮:「プイさんのおかげです」

プイ:「お役に立てて嬉しいです」

二人、祭りの雰囲気に包まれて歩いている。傍から見ると、まるでカップルのよう。


○同じ祭り会場 夕方

美優がNGOの子供たちと一緒に祭りを見に来ている。遠くから蓮とプイの姿を目撃してしまう。

美優:「あれは…」

子供A(英語で):「Miss Miu, what's wrong?」

美優(英語で):「Nothing... let's go somewhere else」

美優、その場から立ち去ろうとするが、蓮の笑顔を見てしまう。

モノローグ(美優):「蓮さん…私なしでも楽しそう」

胸が痛むが、表情を隠して子供たちの世話を続ける。

美優(英語で):「Come on, children. Let's see the traditional dance」

子供たち:「Yes, Miss Miu!」



○ホテル 美優の部屋 夜

美優が一人でベッドに座っている。

モノローグ(美優):「蓮さんは新しい生活を楽しんでいる。それでいいのよ。私も前に進まなければ」

○アパート 蓮の部屋 同時刻

蓮が一人で祭りでの出来事を思い返している。

モノローグ(蓮):「久しぶりに笑った気がする。でも、美優さんがいない生活に慣れてしまうのが怖い」

美優の写真を見つめる。

蓮:「美優さん…」



○NGO事務所 翌月

美優が現地スタッフと最終的な話し合いをしている。

現地スタッフ(英語で):「So, will you stay with us for another year?」

美優(英語で):「Yes, I accept your offer」

現地スタッフ:「Wonderful! The children will be so happy」

美優:「I want to make a real difference here」

現地スタッフ:「You already have」

会議後、美優が窓から外を見ている。

モノローグ(美優):「日本に帰る理由もない。ここが私の新しい人生の場所」

○現地事務所 同時刻

蓮もまた、延長契約について考えている。

モノローグ(蓮):「美優さんがいないこの国に、まだ2年も残るのか…」

○日本 麻里子のマンション 同時刻

麻里子が現地からの報告を受けている。

宮下麻里子(電話で):「二人とも現地に留まるの?」

リナ(電話越し):「はい。完全に別々の道を歩んでいます」

宮下麻里子:「完璧ね。このまま時間が経てば、蓮さんは自然と私のもとに戻ってくる」

満足そうな麻里子。

ナレーション(美優):「私たちはそれぞれ新しい道を歩み始めた。愛し合っていた過去を胸に、でもそれに縛られることなく。この選択が正しかったのかはわからない。でも、前に進むしかないのだ──」


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