運命の契約書

第25話 巧妙な嫌がらせ

○NGO事務所 朝 2か月後

美優が現地の子供たちと楽しそうに英語の授業をしている。表情は明るく、以前の輝きを取り戻している。

子供A(英語で):「Miss Miu, today's lesson was so fun!」

美優(英語で):「I'm glad you enjoyed it! Keep practicing」

子供B:「Will you stay with us forever?」

美優:「I'll stay as long as I can help you learn」

子供たちが帰った後、同僚のサラが声をかけてくる。

サラ(英語で):「You're amazing with them. They adore you」

美優:「They're wonderful children. Teaching them gives me so much joy」

サラ:「You seem much happier lately」

美優:「I am. This work means everything to me now」

モノローグ(美優):「やっと自分の居場所を見つけた気がする」



○NGO事務所 昼

美優がコンピューターで教材の準備をしていると、システムがクラッシュする。

美優:「What? All my work...」

画面には何も表示されず、朝から作っていた教材がすべて消えている。

IT担当者(英語で):「Strange, this shouldn't happen. Looks like someone accessed your files remotely」

美優:「Remotely? But who would...?」

IT担当者:「Could be a hacker. We'll investigate」

美優、困惑する。

モノローグ(美優):「なぜ私のファイルが…?」

実はリナが麻里子の指示で、美優の仕事を妨害し始めていた。



○ホテルのロビー 夕方

リナが美優を慰めている。

リナ(英語で):「I heard about your computer problems. That's terrible」

美優(英語で):「I lost a whole week's work. I don't understand why this happened」

リナ:「Maybe it's a sign that you're working too hard」

美優:「But the children depend on these lessons」

リナ:「You're too dedicated, Miu. You need to take care of yourself first」

美優:「I suppose you're right...」

リナ:「Why don't you take a break this weekend? I know a nice place」

美優:「I should probably stay and recreate the materials」

リナ:「No, you need rest. Trust me」

リナ、内心で微笑んでいる。美優の時間を無駄にさせ、仕事から引き離そうとしている。



○NGO事務所 翌週

美優が所長のデイビッドに呼ばれる。

デイビッド(英語で):「Miu, I'm afraid we have some bad news」

美優:「What's wrong?」

デイビッド:「Our main funding source has suddenly withdrawn their support」

美優:「Withdrawn? Why?」

デイビッド:「They said there were questions about our program effectiveness」

美優:「But our results have been excellent」

デイビッド:「I know. It doesn't make sense. Someone has been spreading negative reports about our work」

美優、ショックを受ける。

美優:「Negative reports? From whom?」

デイビッド:「We don't know. But it's very serious. We might have to close the program」

モノローグ(美優):「こんなことって…子供たちはどうなるの?」



○日本 麻里子のマンション 夜

麻里子がリナと電話で話している。

宮下麻里子(電話で):「よくやっているわね。彼女の仕事を台無しにするのは効果的」

リナ(電話越し):「はい。資金源への工作も成功しました」

宮下麻里子:「素晴らしい。彼女が挫折すれば、日本に帰るしかなくなる」

リナ:「その通りです。そして彼は孤独になる」

宮下麻里子:「完璧な計画よ。もう少し追い詰めなさい」

リナ:「承知しました」

麻里子、ワインを傾けながら満足そうな表情。



○現地事務所 昼

蓮がプイと仕事をしているが、集中できずにいる。

プイ(日本語で):「カンザキさん、大丈夫ですか?」

蓮:「すみません。少し気になることがあって」

プイ:「お話ししてください。お力になれるかもしれません」

蓮:「実は…元婚約者のことが心配で」

プイ:「まだ彼女のことを?」

蓮:「彼女がNGOで働いているという話を聞いたのですが、最近そのNGOが資金難だと…」

プイ:「それで心配に?」

蓮:「彼女が困っているなら、助けたいと思うんです」

プイ、内心で不快になる。

プイ:「でも、彼女はあなたを拒絶したのでしょう?」

蓮:「それでも、愛していた人ですから」

プイ、蓮の優しさに焦りを感じる。



○美優のホテル 夜

美優が部屋で休んでいると、隣の部屋から大音量の音楽が流れ始める。

美優:「What's that noise?」

フロントに電話するが、なかなか対応してもらえない。

フロント(電話越し):「Sorry, we'll check it later」

結局、一晩中音楽が止まらず、美優は眠れない。

翌朝、フロントで苦情を言うが…

フロント係員(英語で):「Strange, room next to you was empty last night」

美優:「Empty? But the music...」

フロント係員:「Must be your imagination. You look tired」

美優、困惑する。実はリナがホテル関係者を買収して嫌がらせをさせていた。



○NGO事務所 朝

美優が出勤すると、自分のデスクが荒らされている。

美優:「Oh no... my materials!」

手作りの教材がすべて破られ、散乱している。

サラ:「Miu! What happened?」

美優:「Someone destroyed everything...」

サラ:「Who would do such a thing?」

美優:「I don't know...」

涙ぐみながら破られた教材を拾い集める美優。

モノローグ(美優):「なぜこんなことが…私が何をしたって言うの?」



○NGO事務所 昼

美優が子供たちに授業中止を告げる。

美優(英語で):「I'm sorry children, but we can't have class today」

子供A:「Why not, Miss Miu?」

美優:「Our materials were... damaged」

子供B:「When will we have class again?」

美優:「I don't know... maybe never」

子供たちの失望した顔を見て、美優はさらに辛くなる。

子供C:「Don't leave us, Miss Miu」

美優:「I'm so sorry...」

モノローグ(美優):「この子たちの未来を奪ってしまった」



○ホテルのロビー 夕方

落ち込んでいる美優にリナが近づく。

リナ(英語で):「I heard about the NGO. I'm so sorry」

美優(英語で):「Everything is falling apart, Lina」

リナ:「Maybe it's time to go back to Japan」

美優:「Back to Japan?」

リナ:「This country is not safe for you anymore」

美優:「But the children...」

リナ:「You've done all you can. Sometimes we have to accept defeat」

美優:「I don't want to give up」

リナ:「But what choice do you have? No job, no money, constant harassment...」

美優、リナの言葉に追い詰められる。

リナ:「Your family in Japan must be worried about you」

美優:「Maybe you're right...」

リナ:「I can help you book a flight」

美優:「I... I need to think about it」



○アパート 夜

蓮が美優のNGOについて調べている。パソコンで資金問題のニュースを読んでいる。

モノローグ(蓮):「彼女が困っているなら、何かできることがあるはず」

電話で会社の財務部に連絡する。

蓮(電話で):「CSR予算で、現地のNGOを支援できませんか?」

財務部(電話越し):「どちらのNGO ですか?」

蓮:「子供の教育支援をしている団体です」

財務部:「検討してみます」

モノローグ(蓮):「美優さんを直接助けることはできないが、彼女の大切な仕事なら支えたい」



○美優のホテル 深夜

美優が寝ていると、火災報知器が鳴り響く。

アナウンス(英語で):「This is not a drill. Please evacuate immediately」

美優、慌てて避難するが、外に出ると誰もいない。

美優:「False alarm?」

ホテルに戻ると、部屋が水浸しになっている。スプリンクラーが誤作動したとのこと。

フロント係員:「Sorry for inconvenience. System malfunction」

美優:「All my belongings...」

衣服も書類もすべて水に濡れてしまった。

モノローグ(美優):「これも偶然? でも、あまりにも続きすぎる」



○ホテルのロビー 朝

濡れた荷物を抱えて途方に暮れる美優。リナが現れる。

リナ(英語で):「Oh my god, what happened?」

美優(英語で):「Everything is ruined... my clothes, documents, everything」

リナ:「This is the last straw. You can't stay here anymore」

美優:「I don't understand why all this is happening to me」

リナ:「Sometimes life sends us signals. Maybe it's time to listen」

美優:「Signals?」

リナ:「To go home. To start fresh in Japan」

美優、完全に打ちのめされている。

美優:「Maybe you're right... I can't take anymore」

リナ:「I'll help you pack what's salvageable」

美優:「Thank you, Lina. I don't know what I'd do without you」

リナ、内心で勝利を確信している。



○ホテルの代替部屋 夕方

美優が竹内由香に電話をかけている。

美優(電話で):「由香、日本に帰ることにしたの」

竹内由香(電話越し):「え? 急にどうして?」

美優:「色々あって…もうここにはいられない」

竹内由香:「何があったの?」

美優、これまでの嫌がらせについて話す。

竹内由香:「それって偶然にしてはおかしくない?」

美優:「そう思う?」

竹内由香:「誰かがわざとやってるんじゃない?」

美優:「でも、誰が? 私に恨みを持つ人なんて…」

竹内由香:「美優ちゃん、よく考えてみて」

美優:「もう疲れたの。考える気力もない」

竹内由香:「わかった…でも、逃げるのは美優らしくないよ」

美優:「今の私には、これが精一杯」


○美優のホテル部屋 夜

美優が荷造りをしている。子供たちからもらった手紙や絵を見て涙を流す。

モノローグ(美優):「子供たち、ごめんなさい。約束を破ってしまって」

○蓮のアパート 同時刻

蓮がNGO支援の書類を作成している。

モノローグ(蓮):「美優さんの大切な仕事を守りたい。それが今の私にできること」

○リナのアパート 同時刻

リナが麻里子に最終報告している。

リナ(電話で):「彼女は明日日本に帰ります」

宮下麻里子(電話越し):「完璧ね。お疲れさま」

リナ:「長い戦いでしたが、勝利しました」

宮下麻里子:「これで蓮さんは完全に孤独になる。私の出番が来るわ」

ナレーション(美優):「私はついに屈してしまった。見えない敵の執拗な攻撃に負けて、逃げ帰ることになった。でも、まだ知らない。この嫌がらせの背後に、恐ろしい計画があることを──」
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