嘘つきな天使

ぐったりと疲れて髪も乾かさず私たちは裸にタオルを巻き付けたままベッドにダイブ。

「あー…気持ち良かった…」と言いかけて私はがばっと起き上がった。まだ寝ころんだままの天真が不思議そうに私を見上げる。

「てか今更気づいたけど、避妊してなかったよね」

天真は目を細めると私の腕を引き、ベッドに引き戻す。そしてその筋肉質の腕の中にまたも閉じ込められた。

「結婚するんだし、問題ないだろ」

けっ こ ん

そっか……”A”の問題が片付いたら結婚するって約束だった。急に現実を思い出して顔が熱くなった。

天真と結婚―――かぁ……

結婚生活は簡単に想像がつくようなつかないような。一気に色んなことが起こってそれはふわふわととりとめない想像だった。

「結婚って言ったらあれだよな~、やっぱ両親に挨拶とか?お前が望むなら豪華な結婚式をやってもいいぞ?」と天真は子供の様に無邪気に笑う。

両親に挨拶?それに結婚式?天真の方がよっぽど現実的だ。

私はまるで考えてなかった。結婚するって結構一大イベントなのに、何で今まで深く考えてこなかったのよ私。今までのブスで冴えない私にどんなウェディングドレス着ても似合わないって分かってたし、そもそも私って由佳ぐらいしか友達いないし結婚式にも呼べる人少ないし。

「てか天真、お父様と仲が悪かったんじゃないの?」

「は?誰から聞いた?まぁ多少面倒くさいけど至って普通の親父だぜ?仲は悪くない」

香坂さん―――千尋さんのことがあったから私に嘘をついたのか、それとも天真が香坂さんに嘘をついていたのか。

まぁどっちでもいいや。



「嘘つきな天使さん」



天真の鼻をちょっと弾くと

「はぁ?俺は最初から嘘なんて。てか天使とか言わないでくれよ」と天真は不服そうにしていたが、「でも、天真のお父さんかぁ。見たことないけど天真に似てかっこいいんだろうなぁ」とうっとりと宙を見上げると

「不細工で短足でデブだ」と天真がまたもブスリと答える。

「また嘘ばっかり」

ホントは見たことあるんだよね、天真のお父さん。藤堂総合病院のパンフレットに理事長の顔が映ってたもん。それが驚く程天真そっくり。髪に白いものが混じっていたし、皺も深かったけれど、今風で言うとイケオジって言うの?

天真が歳を取るとああなるのか、と思うと将来もちょっと楽しみ。
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