嘘つきな天使

「ねぇ、前から思ってけど”エクスーシアイ”ってどういう意味?」

「”神の掟を忠実に実行する能力”と言う意味がある。俺がこの名を語って動画サイトに出始めたのは五年前、千尋を失ってからだ。
行き場のない怒りをぶつける場所が欲しかった」

そう言う意味が―――あったのね。

私は天真の腕に縋った。



「だが俺には今俺だけの”エクスーシアイ”がいる。

彩未がいるだけで、俺は生きていける」



私が”神の掟を忠実に実行する能力”をもつ天使?

「だったら天真は私の神様だよ。私をここまで変えてくれたから」

ずっと神様なんて存在しないと思ってた。でも実際はこんなに近くに存在したんだね。

「俺は神なんかじゃない。ただの産婦人科医だ。俺こそ彩未に感謝だ。俺を変えてくれた」



「天真、今度こそ幸せにしてあげる。私は絶対天真から離れない」



今もきっと雨で半分消えかかっている”A”のカード。

私はもう天真にそんな顔させない。

「今度から二人で雨の日に飲もうね。私は麦茶だけど、
千尋さんの為に」

私が笑いかけると天真が突然私をぎゅっと抱き寄せてきた。




「俺、彩未のこと愛してる。
今度こそ絶対手放さないから」

「うん、私も天真から離れない。絶対」

「約束だぞ」

「約束」

私は小指を差し出した。天真の骨ばった小指と絡まった瞬間私たちはキスをした。



「ところで天真、天真って変わった名前だよね。理事長さんは何でその名前を付けたの?」

「あ?着けたのは亡くなった母親だ。生まれたときそれは天使のように可愛らしかった”らしい”」

「”らしい”って」今は天使とはかけ離れてるけど。ふふっと笑うと「笑うな」と天真のデコピンが飛んできた。

「あと、歳は?そう言えば長い間一緒にいるのに聞いてなかった」

「あ?34」と言う答えが返ってきて「文句あっか?おっさんとか言いたいのか?」とかブスリと答えが返ってきたときまたも笑った。

「別に。想像より少し若かった。私たち知らないこと多すぎだね。順番が変わっちゃったけどお互いのことこれから色々知っていこ?」

私が提案すると



「知らなくてもいい。俺は彩未と言う女を好きになったんだからな。
例え過去に何かがあっても全部受け止める」


「片翼の天使に受け止めるのは無理だよ。でも私たち二人いればこれからどんなことがあっても受け止めることができる。
天真はもう一人じゃない」

私が笑いかけると


「そうかもな。俺たちは二人で一つ」


それは比翼の天使。

二人一緒ならどこにだって飛んでいける。


~FIN~
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