嘘つきな天使

天真―――

そんなこと気にしてたの?

「わ、私は大丈夫だよ。それよりも由佳の方が心配。本人は堕ろすつもりでいたけどやっぱショックだよ」

私の言葉に天真はふっと優し笑い

「優しいんだな……そう言うとこも好きだけど」

え―――好き?

そ、それは人間的に好きって意味で、別に女として見てるわけじゃないよ。

勘違いしちゃダメ彩未。もう知坂のときみたいに傷つきたくないよ。

でも―――

「寒いだろ。もっとこっち来いよ」と強引ではない仕草で引き寄せられ、私はそれに抗えなかった。

何でかなぁ、天真の知坂とは違った強引さはいっつも優しさがあって私はいつも素直になれる。

天真の言った通り彼の体はあったかくて、さっきまで寝れるかどうか心配だったけれど、それをあっけなく忘れるくらい睡魔はすぐにやってきた。

天満の体温や香り―――なんて心地よいんだろう。

そしてあっという間に意識は途切れた。

またも日常的に私は5時半に目が覚めた。隣に天真の姿はなかったけれどジョギングでもいってるんだろう。

私は昨日の残った食材を総菜を使って天真が帰ってくるまでに朝食を作った。

天真はそこから三十分も経たないうちに帰ってきた。昨日と同じスポーツウェアに身を包み

「お、起きてたか?てか朝飯?」と小さなテーブルに並べられたって言っても昨日と殆どメニューは変わらないけど、唯一増えたのは昨日手につけなかった玉ねぎの丸ごとスープぐらいだったから、それにチーズとバゲットパンを乗せてパイ風にしてみてみたけど。

「朝から豪華だな」と天真はその場でウェアを脱ぐ。

「ちょ、ちょっと何で脱ぐのよ!」と言うと

「だってシャワー浴びたいし」

「だったら脱衣所で脱いでよ」と私が目を吊り上げると

「分かったよ、うちのお姫様はまるで女王様だな。せっかく作ってくれた飯が冷めるまでにすぐ出てくる」と天真は言われた通りバスルームに向かっていった。

お姫様……!ってことは嬉しいけど女王様ってのは……

嬉しいのやらそうじゃないのか何だか複雑だ。

だけど、私。一昨日より

ほんの少し幸せだ。
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