嘘つきな天使

由佳に香坂さんが用意してくれた差し入れを手渡すと、由佳は手を叩いて喜んだ。

「わー!ここのケーキ美味しいんだよね!たまに疲れた時ご褒美に買うの」

そう……だったんだ…

由佳がそんなことしてるなんて知らなかった。そう言えば、長い間友達やってるのに意外に知らないこと多いんだな私。とちょっと自分が恥ずかしくなった。由佳の好きなこと、嫌いなこと。高校からアップデートされてないことに気づかされた。

「椅子、そこにあるから座って?」と由佳に勧められ私たちは折り畳みのパイプ椅子を広げた。

パイプ椅子に腰かけると由佳がじっと私の方を見てきて

「彩未、雰囲気変わった?可愛い」と目をぱちぱち。

そう言えばコンタクトだし、いつもはひっつめ髪を今は解いてるし…?

「てか由佳まで『可愛い』って……やめてよー、私可愛くないから」と俯くと

「何で?私は高校のときから可愛いと思ってたよ?」と由佳は不思議な物を見るような目つきで首を傾ける。「正直さー、彩未こっちきたら絶対垢ぬけて私なんて引き立て役にしかならない気がして焦って自分も必死に背伸びしてオシャレしてたんだよね。考えたら彩未が私を引き立て役に利用する子じゃないって分かるんだけどね」

由佳は悪戯っこのように舌を出す。

そう……だったの??

てか由佳を引き立て役なんて……由佳の引き立て役になってる自覚はあったけど。

「天真に強引に眼科に連れていかれて、髪だって解けって」唇を尖らせると

「へー、天真先生見る目あるね。ね、このままプロデュースしてもらったら?」と由佳はニヤニヤ。

ぷ、プロデュース!?

「いや、今のままで十分だか…」

「プロデュースか、ふむ。それは面白そうだ♪」

天真も!何由佳の冗談にノッってんのよ!

「ね、ねぇ加納くんは?今日は来てくれた?」私は話題を逸らす意味で加納くんの名前を出した。

「うん、昨日面会時間ぎりぎりだったけど、忙しいからしょうがないよね」由佳はここになってちょっと寂しそうに笑った。

「今日は?」

「今日も来てくれるみたいだけどはっきり時間は分かんないや」

そっか……由佳が辛いとき、何より元気になれるの加納くんの存在だと思うんだけどな。

こんなときぐらい仕事、何とかならないのかな。

「そう言えば昨日西園寺さんに人生で初めて事情聴取っての受けたよ」由佳は何が可笑しいのか笑いながら口に出した。

由佳……やっぱり無理してるんだろうな―――
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