天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜



ヴェノミール王宮の回廊は、黒曜石の
ように艶めく石で組まれていた。

ミツバチの宮殿とは違い、曲線のない
鋭い造り。
風が吹けば、翅が重なるような低い翅音が天井の窪みから響いてくる。



「さて、王妃様!今日は王宮をご案内しますね!」



カミリアの隣で、筋骨隆々の侍女蜂が
張り切って歩いていた。
背に生える鎧のような翅楽しげに鳴らしながら。


「な、なるほど……立派な宮殿ですね」
「でしょ? ヴェノミールは武と統率の国ですから。
力ある者が民を守る、それが流儀!」



歩きながら、ルーラはふと思い出したように言った。



「あ、そうそう。どうです?
陛下……ちゃんとやさしかったですか?」





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