天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
「もう外にでてますよ!王妃はお疲れだから、朝はゆっくり寝かせて差し上げるよう申し付けられて」
「そ、そんな……」
翅を縮こまらせて恐縮するカミリアを
よそに、ルーラは元気に語りだす。
「アザレオ陛下、最近はずっと国境の視察に出ているんですよ。
他種族のハチや、我らの天敵・オニヤンマの動きも活発で」
「王が、直接視察に?」
「ええ、いちばん槍で。なんだかんだ、
王は働き者なんですよ。
朝も早いし、剣も槍も毎日振るってるし」
ルーラはヴン、と翅を鳴らし促す。
「さあさ、早く行きますよっ!」
「え、あの、着替えは――!?」
「ばっちり用意してありますよっ!
さあ、着替えて!」
カミリアは豪快に着替えを手伝われながら、ネグリジェから警戒色の美しいドレスに着替えた。
「うん!とってもお似合いですよカミリア様っ!」
「あ、ありがとう……」
まだ怯えと不安が残っていたけれど。
翅の奥が、ほんの少しだけ――あたたかくなった。
(スズメバチにも、怖くない人もいるのかも……)