天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
「命は短くとも、心を燃やせる者がいることを――美しいと思う。
……近年の異常気象で、セミも姿を消しているからな」
自然界を脅かす異常気象。
今を生きる生物が、次の年も無事に日の目を見るとは限らない。
しんみりさを振り払うように、ルーラがひそひそ声で囁いた。
「恋の歌に聞き惚れてますね?
王妃様も……やはり交尾にご興味がおありで?」
「ち、ちがいますわっ!」
カミリアは真っ赤になって顔を背ける。
それを見て、アザレオまでくすっと笑った。
「これからが楽しみだな。わが国の繁栄のためにも……」
カミリアをちらりと見て、ほんのわずかに口端を吊り上げ――
すぐに王たる顔へ戻る。
「さあ、先へ進むぞ。我らの身体が動ける、日没前に……必ず帰るからな」
セミたちの絶唱が遠ざかり、四人は再び風を切って飛び立った。