天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜

目を丸くするカミリアに、ルーラが微笑んだ。


「夏のリサイタルですよ、王妃様。
あれはすべて"交尾してぇっ♡"の声なんです」
「こ、交尾……」
「ええ。成虫の彼らは短命ですから、
今日を逃せば明日はないかもしれない。
だから一瞬の命を燃やして、愛を叫ぶんです」


背後を見れば、アザレオが静かに羽を止め、厳かな面持ちで森を見渡しているのに気づいた。


(陛下は、どう思っていらっしゃるのかしら?)


近くにいたグリオンも、無言で視線をそらしながらも、どこか尊敬を込めた表情で胸元に手を当てている。

アザレオはゆっくりと唇を開いた。




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