天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
自然界のデスサイズ
嫌な予感が背筋を駆け上がる。
「……今の音……」
カミリアが茂みに視線を向けた、その先。
そこにいたのは――
アザレオよりひと回り以上も大きな、
"オオカマキリ"の女だった。
「……ぁっ!」
悲鳴を上げそうになり、カミリアは口元を押さえた。
交尾を終えた後らしい、膨らんだ腹。
その足元には、男のカマキリ《《だったもの》》が散乱していた。
頭部は失われ、胸部は裂け、生ぬるい体液が草の上を濡らしている。
「はぁ……バリ、バリッ……んぐ……」
髪を振り乱し、うっとりとした顔で
肉を咀嚼するカマキリ女。
頬を伝う体液を舌でなぞりながら――
ついさっきまで愛を交わしていた相手を"完食"していた。
「んん、はぁ……おいしかった……♡ 栄養になったわ……」
赤く濁った複眼が、ゆっくりとこちらを向く。
「でも……まだ、足りないの……」
ぬるりと唇を拭いながら、舌なめずりする。