天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
「っ、グリオン……!ルーラ……!
よくぞ戻った……ッ!」
アザレオがほっとしたように息を吐く。
「ご無事ですか、両陛下!!」
ルーラが翅を鳴らしながら突撃し、
グリオンの槍が鎌を弾く!
「ぐっ……がああああッ!!」
花粉で視界を奪われ、方向感覚や獲物の気配を探る触覚が粘ついたまま、
カマキリ女が後退する。
「このっ、スズメバチどもがァ……ッッ!!」
翅をバッと開き、血走ったままの複眼で睨みつけ――
「絶対に、覚えときなさいよぉ……ッ!!
くそ……触覚さえやられなければ………っ」
不利を悟ったカマキリ女は、悔しげに
触覚を払いながら、地を這うように茂みの奥へと消えていった。
四人の間に、夕刻前の爽やかな風が吹き抜ける。
「……たす、かった……」
カミリアの膝が、がくんと折れた。
そのまま、へなへなと草にへたりこむ。